フェレットくんと暮らす飼い主のみなさん、こんにちは。
フェレット情報局は、フェレットの生態・お世話の仕方について、専門店『フェレットリンク』のスタッフが発信するメディアです。

人間よりもはるかに早いスピードで成長するフェレットくんは生後1年で大人になり、その後もどんどん年齢を重ねていきます。
フェレットも、高齢になると若い頃のようには身体が動かなくなってきます。楽しく快適に暮らすため、どんなサポートをしてあげれば良いのでしょうか。

高齢フェレットのお世話のポイントや気をつけるべき病気など、シニア期を迎えるにあたって知っておきたいことを2回にわけて取り上げたいと思います。
トンネルからこちらを見上げるフェレット

4歳からが“高齢” フェレットのライフステージ

人間と暮らすフェレットの寿命は6〜8年。10歳を超えるご長寿くんもいますが、かなりのレアケースです。

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フェレット4歳を超える頃からがシニア期で、全身の機能が緩やかに衰え始めます。この時期に起こる変化を見ていきましょう。

フェレットはシニア期を迎えるとどうなるの?

足腰が弱くなる

老化による筋力低下で足腰が弱くなるのは人間同様です。段差を乗り越えづらそうにする、高いところへの上り下りに時間がかかるようになる、動きが鈍くなる、などの様子が見られます。

食欲低下・食べる量が減る

シニア期には自然と食べる量が減ります。活動量の低下にともなって必要とするエネルギー量が減ることに加え、嗅覚が鈍くなることも関係していると考えられています。

被毛の色合いが変化する・脱毛・毛艶がなくなる

被毛が薄くなる、被毛の一部が白髪のように変色する、模様が薄くなるなど毛並みが変化することがあります。クリーム色のフェレットやアルビノのフェレットは、より黄色っぽい被毛になることも。
被毛と皮膚が乾燥しがちになるため、毛並みのツヤがなくなり、皮膚の痒み・ただれも起こりやすくなります。

トイレの失敗が増える

トイレに間に合わない・足が上がらずトイレに入れない・排泄の姿勢が取れなくなる・トイレの場所を忘れたり間違ったりするなど、上手に用を足せないことが増えてきます。

睡眠時間が伸びる

もともと1日の半分以上を眠って過ごすフェレットですが、高齢になるとさらに長時間、眠る傾向があります。「病気かな?」「もしかして、ストレスサイン?」と心配になりますが、起きているときに元気に動き回っているのなら問題ないケースがほとんどです。フェレットの寝顔

体調を崩しやすくなる

シニア期にはちょっとしたことで不調を来たすようになるもの。免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなりますし、体温調節能力の低下にともない暑さや寒さに対する耐性も低くなります。たとえ熱中症や低体温症といった直接的な病気にはならなくとも、負担が積み重なると体調不良のきっかけになりかねません。

おとなしくなる・甘えん坊になる? 性格も変化

「若い頃に比べ、おとなしくなった」「落ち着きが出てきた」と感じる飼い主さんが多いようです。「元気がなくなった」と思うと寂しく感じますが、シニア期を迎えたことでじっと抱っこさせてくれる時間が増える子もいます。中には、甘えん坊化して自ら抱っこを求めてくる、なんて話も。

また、年齢を重ねると他のフェレット、特に若い個体との交流を嫌がるようになる子もいるようです。ライフステージで身体能力や生活のペースも異なりますから、自然なことかもしれません。

「年齢による自然な変化」と思っていたら、病気の症状ということも

気をつけたいのは「老化現象」でなく、ケガや病気による症状が出ているケースです。

特に、歩行困難やふらつきは、さまざまな原因で起こります。
足の骨折や脱臼、椎間板疾患などでは歩き方がおかしくなります。フェレットに多い病気「インスリノーマ」で見られる低血糖の発作時には足に力が入らなくなりますし、後ろ足への血流低下を引き起こす疾患も。
他にも「若い頃のように食べなくなったけど、そういうものだろう」と思っていたら歯の問題でドライフードが食べられなくなっていた、加齢による脱毛ではなく病気で毛が抜けていた、などのケースもあります。

老化か、病気の症状かは、獣医師でなければ判断が難しいもの。もし病気が隠れているなら進行を止めなければなりませんし、治療で回復の可能性もあるでしょう。
急激な様子の変化に気づいたら、「高齢だから」と決めつけず、受診をおすすめします。

シニア期のお世話のポイント

移り変わるフェレットくんのライフステージを支えられるのは、飼い主さんです。お世話のポイントをご紹介します。新聞紙の上のフェレット

ケージや放牧スペースは身体能力の衰えを意識したレイアウトに

若い頃と同じようには動けないことを念頭に、生活スペースのレイアウトを確認し、変更しましょう。例えば、以下のような工夫ができます。

・転落防止にそなえてハンモックの高さを下げる
・ハンモックに登るのが大変になってきているなら床に寝床を設置する
・階段をスロープに変更するなど、段差をなくす
・滑って歩きづらいフローリングには、マットを敷く
・給水ボトルは無理なく口が届く位置に設置(場合によってはボトルでなく皿に変更)

排泄のストレスを減らすには環境調整を

代謝の早いフェレットは1日に何度も排泄しますから、トイレ周りの環境整備は大切です。壁が低いトイレなら、足腰が弱ってきた子もストレスなく出入りできます。トイレに間に合わないことが増えてきたら、複数個を設置するのもおすすめですし、お尻のケアには、ペット用のウェットティッシュや赤ちゃん用のお尻拭きが役立ちます。

ハンモックや毛布などに排泄物がついて汚れることも増えますから、洗濯の頻度は上がります。布製品は洗い替え用を複数枚、準備しておくと良いでしょう。

セルフケアしきれない身体のお手入れは積極的に手伝ってあげて

肉球が硬く乾燥してひび割れる場合は、少量のビタミンEクリーム、オイル、またはワセリンを塗ってください。
また、高齢になると毛づくろいで飲み込んだ毛による腸閉塞も増えるので、頻回なブラッシングで抜け毛を回収する、毛球の排出を助けるサプリメントを与えるのもおすすめです。
活動量が減ると爪も磨り減りにくくなりますから、伸びすぎた状態になっていないかこまめにチェックします。
ボールプールの中のフェレット
ちなみに、清潔を保とうと入浴の頻度を上げるのはおすすめできません。
トイレの失敗が増え身体が汚れがちになるので、頻繁にお風呂に入れたくなる飼い主さんもいるでしょう。しかし、シニア期のフェレットは肌が乾燥しやすいため、入浴は負担になります。汚れた部分だけを濡らしたタオルで拭き取る対応がおすすめです。

温度・湿度管理は入念に

外気温の変化にさらされにくい場所にケージを設置していることを確認し、特に、夏場は室温上昇に気をつけましょう。適温は15〜25℃ですが、これはあくまで目安。この範囲に設定しても寒がる子には夏でも暖かい素材の布製品を与えるなど、臨機応変に対応してください。

乾燥しやすい冬場は、風邪予防の観点から加湿がおすすめです。インフルエンザや一部の風邪は人間からフェレットにうつりますから、感染対策として湿度は40〜60%をキープしましょう。

「ご飯を食べない」「痩せる」への対応 高齢フェレットにフード変更は必要?

専門家の間でもいろいろな意見があるのですが、フェレットの場合、栄養価の観点からはシニア用のフードへの切り替えは必須ではありません。適切な栄養バランスのフードであれば、高齢になっても同じものを与え続けて大丈夫です。

ただし、年齢が上がると歯のトラブルも増えますから、ドライフードをふやかした流動食に変更しなければならないケースも起こります。また、食欲不振で体重減少が目立つ子には、いつものフードをお湯でふやかしペースト状にして、そこにバイトを加えてかき混ぜて与える、高栄養なダックスープに変えるなどの工夫も必要です。

フードを変えるにもコツが必要 焦らずゆっくり

フードを見直したい、サプリメントも追加で与えてみたい、などの際は、1週間くらいかけて徐々に変更することをおすすめします。
フェレットはもともと、フードの変更を嫌う子が多いのですが、高齢になるとますます、食べ慣れた味以外を受け付けなくなります。また、急に食事を変えると便秘や下痢を起こすこともあるので、【フェレットのエサの与え方】食べ放題でいいの?フードの変更方法は?を参考に、少しずつ試してみてください。壁際でこちらを見上げるフェレット

年齢をかさねるフェレットとの時間も楽しく

体力が落ちてくる時期だからこそ、遊びや放牧で身体を動かす機会は大切です。1回あたりの遊び時間を短くする代わりに頻度を増やし、無理のない方法で運動量を確保してあげてください。

以前のような活発さがなくなったと感じるときもあるでしょう。でも、元々がとてもエネルギッシュかつパワフルなフェレットですから、落ち着いたシニア期の子はさらに愛しく感じられる飼い主さんも多いようです。

歳をとることは病気ではありませんし、この時期だからこそ楽しめることもあるでしょう。お世話にかかる手間は増えますが、年齢を重ねたフェレットとの時間も大切に過ごしていただければと思います。

<参考文献>
Cathy Johnson-Delaney(2016). Ferret Medicine and Surgery (English Edition)
田向 健一『フェレット飼育バイブル 長く元気に暮らす 50のポイント コツがわかる本』メイツ出版、2021年


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橋爪宏幸

フェレット情報局編集長。 フェレット専門店フェレット・リンクのオーナー。 ExoticpetSaver FirstResponder/ExoticpetSaver Emergency Rescue Technician。 まだまだ分からないことが多いフェレットの世界。フェレットとの暮らしに少しでもプラスになるように、世界中からフェレットの情報を集めて発信していきます。