フェレットくんと暮らす飼い主のみなさん、こんにちは。
日本ではまだまだ「珍しいペット」のフェレット、生体や飼育方法についての情報も限られていますよね。疑問やお悩みをどこで解決すればいいの?とお困りの飼い主さんもいるのではないでしょうか。

フェレット情報局は、フェレットと暮らす方のためのメディアです。フェレットの生態・お世話の仕方について、日々フェレットに接している専門店『フェレットリンク』のスタッフが発信します。

国内では飼育頭数が少ないフェレットですが、海外に目を向ければメジャーなペットとして愛されています。フェレットの生態にはまだ謎も多く、諸説あります。フェレット情報局は、アメリカ・ヨーロッパのWebサイトや文献も参照しながら、現時点で正しいと思われる情報を中心に、ちょっと珍しいお話もお届けできたらと思います。

さて、今回のテーマは「お風呂」。「冷蔵庫の裏に入り込んでホコリまみれ」「最近ニオイがキツくなってきたかも」なんてときに、フェレットくんをジャブジャブ洗ってあげたい飼い主さんは多いでしょう。

でもちょっと待って、そもそもフェレットはお風呂に入れてもいいのでしょうか? 嫌がるときはどうしたらいい? お風呂上がりの大暴れへの対処法は? そんな疑問にお答えしながら、フェレットくんのお風呂事情をお伝えします。フェレットにお風呂は必要?入れ方とコツは?

本当は入れない方がいい?フェレットにお風呂は「必要」かを考える

フェレットの生態から考えると、お風呂に入れる必要はないとされています。

フェレットのご先祖様だと考えられている「ヨーロッパケナガイタチ」は、体の清潔を保つ目的で日常的に水浴びをする習性はないようです。
フェレットは猫のように、自分で毛づくろいをします。少々の汚れは舐め取ってしまうので、フェレットが生きていくためにお風呂は基本的に不要というわけです。

しかし、人間と一緒に生活するフェレットくんの場合、どうしても、お風呂に入ってもらいたいケースが出てきます。

ポイントはお風呂の頻度! フェレットの入浴は多くても月に1回

定期的にシャンプーで体を洗うというのは、フェレットにとって自然なことではありません。水浴びが好きな子も多く見受けられますが、頻繁に入浴しすぎると皮膚トラブルや、ストレスになることがあります。
高齢、ケガなどが要因でフェレット自身で毛づくろいできない場合をのぞけば、入浴は多くても月に1回程度にとどめましょう。

フェレットの被毛が汚れてしまったらどうする?

お散歩で水たまりに突っ込んで泥だらけ、キッチンに出していたオイルポットに頭を突っ込み油でベタベタ・・・。いたずら好きで元気いっぱいなフェレットくんならではの行動ですよね。

汚れがひどすぎなければ、入浴は必須ではありません。ブラッシングや、汚れた部分をお湯で濡らしたタオルで拭き取るので十分です。
ハンモックからこちらを見るフェレット
ただし、身体に有害なものがついてしまったときは、中毒を防ぐために水や専用の洗剤で洗い流した方がいい場合もあります。万が一、塗料や薬品、殺虫剤などがついてしまったら、できるだけ早く獣医さんに診せましょう。

知っておいてほしい、フェレットの「ニオイ」とお風呂の関係

「ニオイを消すため」にフェレットくんをお風呂に入れたい飼い主さんも多いのではないでしょうか。
例えば、排泄物で汚れた尻尾のニオイが気になる場合は、お風呂で洗い流せばニオイは取れます。しかし、多くの人の感じる「フェレットの臭い」は、特有の体臭と思われます。体臭の改善に入浴が有効かは、専門家の間でも意見が分かれているんです。

「フェレットのニオイはくさい?ペットとしてお迎えする前に知っておきたいこと」でご紹介しましたが、フェレットの体臭の正体はおもに、全身から分泌される皮脂。皮脂が溜まるとニオイも強くなるため、お湯やシャンプーで油を取り去ることで、一旦はニオイがましになります。しかしその後、取り去られた油分を補うため皮脂の分泌がいっそう盛んになり、ニオイをより強く感じるという意見があるんです。

特に、頻繁に入浴しているフェレットは、皮膚と毛皮が乾燥し皮脂が過剰に分泌され「悪臭」につながると考えられています。

体臭が入浴でどの程度、改善されるかは、洗い方にもよるでしょうし、個体差もあると思います。また、ニオイの感じ方は個人差も大きいですから、一概に、入浴の効果がまったく無いとは言えません。
ただ、フェレット特有のニオイを和らげたいなら、こまめな入浴よりも、ケージ内の頻繁な掃除やグッズ類のお洗濯、そして室内の換気が効果的だと考えてください。
(関連コラム:「フェレットのニオイはくさい?ペットとしてお迎えする前に知っておきたいこと」)眠るフェレット

水遊びが好きな子はお風呂のついでにお楽しみも

ところで、フェレットくんにとってお風呂は単に「体を洗う」だけのものではなく、時に「遊び場」になることも。ゴシゴシとシャンプーで身体を洗われるのは嫌でも、自由に遊ぶのは好き、という子もいるようです。フェレットくんの遊び場として、水をはった浴槽を推奨している本もあります。

野生のヨーロッパケナガイタチは時折、魚も捕まえて食べていることが分かっています。泳げる子・泳ぎが得意な子がいるのも納得ですね。

フェレットくんが喜ぶようなら、入浴のついでに水遊びをさせてあげてください。5〜7cm程度の水を張り、ボールなどのおもちゃを浮かべてあげましょう。

楽しく遊んでいるときも、必ず見守りを

フェレットくんをお風呂で遊ばせるときは、溺れたり、事故にあったりする可能性があるので、絶対に目を離さないでください。
排水溝の小さな穴に侵入してしまう、窓から脱走してしまう、お風呂場に置いてある石鹸をかじってしまうなどの危険があります。普段と違う環境ですから、予想もしない事態が起こってもおかしくありません。飼い主さんはいつもそばで見守ってあげてください。

フェレットをお風呂に入れる手順・注意点は?

フェレットくんは「人間の都合」に寄り添って、がんばってお風呂に入ってくれていますから、できるだけ快適に入浴してもらいたいですよね。入浴手順の基本と、ヒントをご紹介します。

浴槽はどうする?

ペット用に市販されているバスタブや、人間の赤ちゃん用のベビーバス、または大きめのたらいなどがよく使用されています。猫用のトイレでも代用できますし、洗面所のシンクに水を溜めるのでも構いません。
浅めのタイプなら、側面に濡れたタオルを掛けておくことでフェレットが自力で出入りできます。ただし、濡れタオルにくるまって抜け出せなくなるなど事故のリスクもあるので、見守りは必須です。

なお、人間用の浴槽も使用できますが、入浴中にうんちをしてしまう子もいるので注意が必要です。また、深さがあると洗う際にやや不便を感じる場合も。手頃な大きさで扱いやすいものがおすすめです。

お湯の温度は「人間のお風呂よりもちょっとだけぬるめ」に

「ぬるま湯」と説明されることも多いのですが、これはフェレットにとっての「ぬるま湯」です。フェレットの体温は38〜39度と人間より高いので、私たちが明らかに「ぬるい」と感じるようでは、フェレットには冷たすぎます。
人間のお風呂の適温が41度前後とされていますから、それよりもわずかに低いくらいの温度がフェレットの適温と考えてください。

お風呂の湯量は少なめで、足元は滑らないように工夫を

入浴の緊張を和らげるためにも、水は深すぎないことが大切です。お湯の量はフェレットくんの足がしっかり浴槽の床につくように、胸の高さを目安にします。浴槽で足が滑るようならゴム製のマットを引くのも良いでしょう。

目と耳にはお湯をかけない

体を濡らすときに注意して欲しいのは、目と耳にはお湯やシャンプーをかけないことです。濡れることで目の炎症、耳の感染症を引き起こすおそれがあるためです。目の周りと耳の入り口に眼科用軟膏を少し塗り、水やシャンプーが入ってしまうのを防ぐ方法も有効です。これからお風呂に入るフェレット

専用のシャンプーを使う

シャンプーはフェレット専用の低刺激なものを使いましょう。ボトルから出してすぐフェレットの体にかけると冷たくてびっくりしてしまいます。手のひらで温めながら泡立てて、ぬるま湯で濡らした体をマッサージしながら手早く洗います。シャンプーが残らないよう、すすぎは丁寧に行ってくださいね。

乾燥はどうする?お風呂上がりは大暴れする子続出!

お風呂上がりはフェレットを素早くタオルで包み込み、水分を取りましょう。

「乾かしてあげようにもフェレットが大暴れして身体を触らせてもくれない」という飼い主さんのお声もよく耳に入ります。
タオルでくるんだフェレットを床に下ろしたらもう大変!走り回って敷物などに体をこすりつけ、そのままバトルモードに突入、なんてこともあるようです。中には、そんなお風呂後の大運動会を見るのが楽しみな飼い主さんもいるようですが、慣れないと「大丈夫かな?」と心配になってしまいますよね。

お湯から上がった途端にフェレットが興奮状態になるのはよくあることです。濡れた体を必死に乾かそうとしているのでしょう。入浴で自分のニオイが消えてしまったことに気づいてびっくりしている、という説もあります。はたまた、単純にお風呂でテンションが上がってしまうのかも?
フェレットの気持ちになって想像してみると、ちょっと困ってしまう行動も愛おしく感じますね。

スムーズに乾かしたいなら「フェレット任せ」がおすすめです

スムーズに乾かしたいなら、暴れ回るフェレットを無理に捕まえてゴシゴシ拭くのではなく、フェレット自身に任せるのがコツです。

おすすめは、専用の乾燥スペースを用意しておくこと。お風呂上がりのフェレットを部屋に放ってしまうとカーペットやソファなどそこら中に濡れた体をこすりつけます。お掃除がまだの床やケージにゴロンゴロン・スリスリされたら、せっかくのお風呂の苦労も水の泡になってしまいます。

そこで、こじんまりしたスペースに清潔なタオルをたっぷり敷き詰めた乾燥スペースを作っておきます。すると、フェレットは思う存分、転げ回って自らを乾かします。大きなタオルで自作の巾着袋のようなものを作り、中に入れて遊ばせる飼い主さんもいるようです。

また、先にケージを掃除する余裕があれば、タオル地のハンモックを吊るしておき、ケージに入って遊んでもらうのも良い方法です。フェレットに負担をかけず乾燥できますね。ハンモックで遊ぶフェレット

フェレットがお風呂を嫌がる!スムーズな入浴のコツは?

お風呂に入るときに震えて嫌がるフェレットくんもいるかもしれません。実は大人しく入浴してもらうコツがあるのです。お湯に入れる際、フェレットを仰向けにして頭を固定しながらお尻からゆっくりと入水させると、嫌がらずに大人しく洗わせてくれます。

その際に頭を固定している親指と人差し指で両耳を塞いであげることで耳にお湯が入ることを防ぐことができます。シャンプー後は、蛇口からお湯を出しながら、シンクの栓を開けて手でお湯をフェレットの体に優しくかけながら洗い流してあげてください。

海外発の驚き情報!フェレットの「オートミールバス」って知ってる?

ところで、海外ではフェレットを「オートミールバス」に入れる飼い主さんがいるそうです。
「オートミールバス」という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。日本でも健康食材として注目を集めるオートミールですが、「入浴剤」としての効果もあるそうなんです。フェレットのオートミールバス

抗炎症作用・保湿作用のあるオートミールバス、フェレットにもオススメ?

オーツ麦にはかゆみや炎症を抑える作用、肌の潤いを取り戻してミネラルを補う作用があります。欧米では民間療法として、アトピーや湿疹、おむつかぶれや日焼けの後などにオートミールバスに入浴する習慣があるのだとか。

かつて日本でも、石鹸の代わりに布袋に米ぬかを入れたもので体を洗っていたそうですが、保湿成分のおかげで肌がツルツルになるそうです。オートミールバスは、海外製の米ぬか風呂のようなものかもしれません。

さてこの「オートミールバス」はフェレットの体に分泌される油脂はそのままに汚れだけを取り除け、刺激となる化学製品も含まれていないので、フェレットのお風呂にもおすすめなのだとか。また、シャンプーの泡を舐めるフェレットもいますが、オートミールバスならお湯が口に入っても安心ですね。
ストッキングの中に粉末状のオートミールを入れてお湯に浸し、お湯が白濁したらフェレットをいつも通り入浴させるのだそうです。

オートミールバスがフェレットの健康にどのくらい効果的か、はっきりとした研究結果が出ているわけではありません。でも、オートミールが含まれた犬用シャンプーは国内でも販売されていますし、いつか、フェレット用のオートミールバスが日本でも流行する日が来るかもしれませんね。

また、海外ではオートミールバスの他にも、フェレットの入浴後のケア用品として、全身に塗る保湿オイルも販売されているんです。乾燥しやすい冬場や換毛期にもおすすめだそう。類似の商品は国内にはまだほとんどないようですが、オイルを補うという視点は日々のケアにも活かせるかもしれませんね。バスタブで遊ぶフェレット

フェレットくんのバスタイムは、様子をみながら無理せずに

フェレットのお風呂で大切なのは、入浴させすぎ・洗いすぎは禁物だということです。健康と清潔を保つために頻繁にお風呂に入るのは、あくまでも人間の習慣。過度な入浴は皮膚トラブルだけでなくフェレットのストレスになり、かえって体調を崩す可能性もあります。

お風呂は最大でも月1回、理想をいえばワンシーズン1回程度にとどめられるよう、「汚れたところだけタオルで拭き取る」「尻尾や足の汚れは部分洗いで」「ニオイ対策はフェレットが日常過ごすスペースの清掃・布製品の洗濯」などの工夫を取り入れてみてください。

また、フェレットも性格が一匹一匹違います。水で遊ぶのが好きな子・嫌いな子、お風呂場は好きだけど洗われるのは大嫌いな子、熱めが好きな子・ぬるめが好きな子、「好み」はさまざまです。入浴手順の基本をおさえつつ、さまざまなアレンジでフェレットくんが喜ぶ入浴方法を見つけていただければと思います。

<参考文献>
Cathy Johnson-Delaney(2016). Ferret Medicine and Surgery (English Edition)
田向 健一『フェレット飼育バイブル 長く元気に暮らす 50のポイント コツがわかる本』メイツ出版、2021年

フェレットのことならフェレット専門店「フェレットリンク」へ

フェレット情報局は、フェレット専門店・フェレットリンクがお届けしています。フェレットリンクでは、お世話の仕方から、爪切りなどの日常のケア、病気のときのアドバイスなど、きめ細やかなサポートを提供しています。元気いっぱいなフェレットくんに会いに、ぜひお店にも遊びに来てください。専門店がお届けするフェレット情報局、次回もお楽しみに!


The following two tabs change content below.

橋爪宏幸

フェレット情報局編集長。 フェレット専門店フェレット・リンクのオーナー。 ExoticpetSaver FirstResponder/ExoticpetSaver Emergency Rescue Technician。 まだまだ分からないことが多いフェレットの世界。フェレットとの暮らしに少しでもプラスになるように、世界中からフェレットの情報を集めて発信していきます。