フェレットくんと暮らす飼い主のみなさん、こんにちは。
日本ではまだまだ「珍しいペット」のフェレット、生体や飼育方法についての情報も限られていますよね。疑問やお悩みをどこで解決すればいいの?とお困りの飼い主さんもいるのではないでしょうか。
フェレット情報局は、フェレットと暮らす方のためのメディアです。フェレットの生態・お世話の仕方について、日々フェレットに接している専門店『フェレットリンク』のスタッフが発信します。
国内では飼育頭数が少ないフェレットですが、海外に目を向ければメジャーなペットとして愛されています。フェレットの生態にはまだ謎も多く、諸説あります。フェレット情報局は、アメリカ・ヨーロッパのWebサイトや文献も参照しながら、現時点で正しいと思われる情報を中心に、ちょっと珍しいお話もお届けできたらと思います。
今回は、フェレットの外観(カラー・模様)について取り上げます。
飼い主さんならご存知の通り、フェレットの姿はとってもバリエーション豊か。一見似ているようでも全身くまなく観察すると、足先や鼻、お腹の模様が違うなど「そっくりさん」は意外にいないものです。そのうえ、どの子もとっても個性的できれいですよね。
最後はもちろん「うちの子が一番!」となるのですが、知るとちょっと面白い、フェレットの色と模様についてご紹介します。
目次
お店やファームによってさまざまに表現されるフェレットの「カラー」
フェレットの外観の分類は、各国のフェレット協会や出身ファーム、販売店によってさまざまに定められており、統一されたものはありません。同じ色合いの子でも、ファームによって違ったカラー名で呼ばれることもあります。
フェレットの外観はカラーに後述の「模様」をあわせて表現できるのですが(例:カラー「セーブル」と模様「ミット」をあわせて「セーブルミット」)、カラーと模様はそれぞれ約10種類ずつあります。そのため判別が難しく、お店によって分け方が違うことや、よりざっくりとした分類をしていることもよくあります。
そこで今回はまず、フェレット愛好家・専門家で作られる、もっとも権威ある団体のひとつAmerican Ferret Association(AFA)で採用されているカラー分類と模様をご紹介しましょう。
次に、日本での飼育頭数が多く、初心者さんでもお迎えしやすいマーシャルフェレットのカラーに触れたいと思います。
American Ferret Associationの基本カラーは8種類
AFAが定めるフェレットの基本色8種類を大まかに色の淡い方から濃い方へ順に並べると、以下のようになります。
アルビノ・ダークアイドホワイト・シャンパン・シナモン・チョコレート・セーブル・ブラックセーブル・ブラック
カラーといえば全身を覆う「被毛」の色が真っ先に思い浮かぶ人が多いかもしれませんね。でも、AFAの分類方法では、カラーは被毛の色だけで決まるのではないんです。
知ってる? フェレットのカラーを決める要素
カラーを決めるうえでは、被毛(「アンダーコート」「ガードヘア」)に加えて、「目の色」そして「鼻の色」が着目されます。
白っぽいアンダーコートと黒っぽいガードヘアのミックスで被毛の色合いが作られる
フェレットの被毛は、アンダーコートという柔らかく短い毛とガードヘア(オーバーコート)という長い毛が合わさった二重構造になっています。細かい毛が密集して生えているアンダーコートには断熱効果が、長くて太い毛が生えているガードヘアには、汚れをはじく機能があります。
このような二重構造の被毛を「ダブルコート」と呼びますが、ダブルコートを持つのはフェレットだけではありません。ウサギもそうですし、イヌやネコは種類によってダブルコートと、被毛が一重構造のシングルコートに分かれます。
フェレットの被毛にそっと息を吹きかけると、暗い色のガードヘアが分かれて、その下にある明るい色の毛が見えます。ほとんどのフェレットはアンダーコートが白かクリーム色で、ガードヘアには黒・グレー・茶色などさまざまな色合いがあります。
フェレットの被毛の色合いを決める大きな要因はガードヘアですが、アンダーコートの毛色も、全体の印象を左右します。
着目すると面白い「鼻の色」
さらに、フェレットのカラー分類では「鼻の色と模様」もポイントです。以下のような種類があります。
被毛に比べると鼻の色は小さく、あまり目立たないかもしれません。でも、お鼻に黒い点があると人間の「ほくろ」のようですし、お顔の大きな特徴になりますよね。だからこそ、フェレットでは鼻の模様もカラー決定の一要素なのでしょう。
これらを踏まえて、AFAのカラー8種類の特徴を見ていきましょう。
AFAの8種類のカラー 一覧表
カラーの知識があると、うちの子の色合いがもっと愛しくなりますね。
カラーと合わせてフェレットの印象の決め手になる「模様」
さて、フェレットの外観を決めるのは「カラー」だけではありません。同じカラーの子でも「模様」で印象は千差万別です。
例えば、カラーが「セーブル」の子でも、模様を組み合わせると「セーブルソリッド」「セーブルスタンダード」「セーブルミット」「セーブルポイント」「セーブルポイントミット」「セーブルローン」「セーブルローンミット」「セーブルポイントローンミット」など、一気に幅が広がります。
フェレットの模様はカラーに負けず劣らず、バリエーション豊富ですね。
フェレットの「模様」は9種類
AFAではフェレットの模様を以下の9種類に分類しています。
ブレイズ、ミット、マット、パンダ、ポイント、ローン、ソリッド、スタンダード、 ストライプ
模様は主に、首の下・足首・尾の色合い、被毛全体に混じるガードヘアの色の割合、そして両目の周りから目の間・頭頂部までどのくらい色合いが入っているかの「マスク」のタイプなどで決まります。
今回は、日本にやってくる子でよく見かける模様「ミット」「ブレイズ」「パンダ」の基準を中心にご紹介しましょう。
ミット
被毛の色は白以外で、手足の先にはそれぞれ手袋・靴下のような白い部分があります。「まえかけ(ビブ)」とも呼ばれる首の下の部分も白色です。
ブレイズ
顔の中心から後頭部、肩にかけて、ひとすじの白く長い模様が入るのが最大の特徴です。目はルビーからブラウンまで多様で、鼻はピンクまたは薄い輪郭のあるピンク色。
膝や足・尻尾にもポイントで白い部分があり、マスクは白か、目の周りに少し色合いが入ります。「まえかけ(ビブ)」や、お腹にも一部、白色が見られたり、ガードヘアには白色や灰色が混ざったりします。
パンダ
頭部はほぼ完全な白色で、肩と腰の部分には濃い色が混じります。目はバーガンディ、鼻はピンク、またはピンクに薄い輪郭があります。足は、4本とも足先もしくは足の半分程度が白で、尾にも白い部分があります。目や耳の周りに少し色のある部分が見られますが、マスクは白です。お腹に白い斑点があったり、ガードヘアに白色や灰色が混ざったりします。
このほかの模様については日本では聞きなれないものが多いのですが、せっかくなのでごく簡単にご紹介します。
マット(Mutt):どんな毛色でも良い。被毛全体にかけて、白いガードヘアに不揃いに黒・茶色が散らばるように入る。
ポイント(Point):白以外の毛色で、ボディカラーとポイントカラーにはっきりと濃度差がある。マスク(顔の模様)はブラック、ブラックセーブル、セーブル、シナモン、チョコレートの場合、薄いV字型で、フルマスクやT字型ではない。シャンパンの場合は、薄いV字型のマスクや、マスクがまったくない場合もある。鼻の色は薄い。
ローン(Roan):白以外の毛色で、4〜6割ほど白いガードヘアがある。色のついているガードヘアはボディ全体に均等に散らばっている。
ソリッド(Solid):毛色は白以外。ガードヘアはほぼすべて白くはなく、頭から尾までしっかりと色がついている。マスクはフルマスクかT字型。
スタンダード(Standard):毛色は白以外。ほぼすべてのガードヘアが白くはないが、ソリッドよりも色は薄い。マスクはフルマスクかT字型。
ストライプ(Striped):毛色は白以外。ガードヘアは9割ほど白で、ボディ全体に色のあるガードヘアが点在しているか、背中に縦線状に色が入る。
カラーと同じく、模様の分類もとっても複雑。ご紹介したAFAの分け方は、あくまでも基準の1つだと考えてくださいね。
マーシャルフェレットのカラーは?
続いて、マーシャルファーム出身のマーシャルフェレットのカラー分類を見てみましょう。公式サイトのカラーチャートによると、代表的なものとして以下の10種類が紹介されています。
出典:https://www.marshallferrets.com/baby-ferrets/
実は、マーシャルフェレットのカラーはこれだけではないんです。「シルバー」や、「バタースコッチ」というカラー名もあります。さらに、全体に白っぽい被毛を持つ子を「スターリング」と表現することも。
ちょっと混乱してしまいそうですが、ご紹介した通り、フェレットのカラーの分け方・呼び名は必ずしも1種類ではありません。微妙に異なる分け方や、カラーの呼び方がたくさんあるのも、フェレットの魅力ですね。
フェレットのカラーで知っておいてほしいこと
バリエーションが豊富なフェレットくんをお迎えする際は被毛の色合いと模様も大きな決め手になりますよね。フェレットくんをカラーで選ぶ際には、注意点があります。
成長とともに色味や模様は変わる
被毛の色合いと模様は、成長や換毛期で変化していきます。冬には「セーブルポイント」だった子が夏には「セーブルスタンダード」になる、大人になるにつれて「セーブル・ローン」になる、などの「衣替え」を見せてくれるのです。
特にパンダやブレイズ、シルバーミットの子たちは変化の度合いが大きいと言われています。ショップで出会った時の姿は「今だけ」と思っておいた方がいいかもしれません。変化する被毛も成長の証、一緒に楽しんでもらえればと思います。
白っぽい被毛の子は難聴の傾向が
ところで、白っぽい被毛の子は、先天性感音難聴(CSD)の割合が多いという報告があります。フェレットの難聴は比較的、多くみられるのですが、パンダやブレイズなどの子ではその確率が高いというのです。これは遺伝性の疾患だとされています。
飼育下で一生を過ごすフェレットなら、難聴でも、生活に大きな支障が出ることはないとされています。完全に聞こえない子をお迎えしても、飼い主さんサイドの心構えや対応でコミュニケーションは十分に可能ですし、もちろん、聞こえる子たちと一緒に遊ぶこともできます。
「白色の子をお迎えしたい」という方は、ショップの店員さんに耳の聞こえ度合いを確認してみることをオススメします。
【参考】
Stéphanie Piazza 1, Marie Abitbol, Kirsten Gnirs, Minh Huynh, Laurent Cauzinille(2014), Prevalence of deafness and association with coat variations in client-owned ferrets.
Journal of the American Veterinary Medical Association, 244(9), pp.1047- pp.52
変化するカラー・どこにも属さないカラーもまたフェレットの魅力
一匹として同じ子はいませんし、パーフェクトなフェレットも存在しません。カラーや模様の分類条件に当てはまる子ばかりではありませんので、例えば「セーブルとチョコレートの中間」と表現するのがピッタリな子もいるでしょう。それもまた、「うちの子だけの魅力」です。
変わりゆく被毛と模様を観察しながら、「今のうちの子に一番近いカラー・模様はどれかな?」と探してみるのも楽しいかもしれません。
最新記事 by 橋爪宏幸 (全て見る)
- どう防ぐ?フェレットの脱走・迷子 - 2023.11.20
- 【うちの子はどれ?】フェレットの性格タイプ - 2023.11.10
- フェレットの高齢期に気をつけたい病気 - 2023.11.10