フェレットくんと暮らす飼い主のみなさん、こんにちは。
フェレット情報局は、フェレットの生態・お世話の仕方について、専門店『フェレットリンク』のスタッフが発信するメディアです。

前回に続き、高齢フェレットくんのお世話をテーマにお届けします。年齢を重ねるとかかりやすくなる病気や気をつけたい兆候など、シニア期のヘルスケアについて学びましょう。

こちらを見るフェレットーフェレットの高齢期に気をつけたい病気

シニア期のフェレットくんとの暮らし、意識しておきたい病気2つ

(1)2頭に1頭が罹患する?「インスリノーマ」

インスリノーマは、膵臓に腫瘍ができる病気です。膵臓は血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する器官。脾臓に腫瘍ができると腫瘍細胞がインスリンを異常に分泌させるため、低血糖状態になります。初期の低血糖はほとんど症状がありませんが、病気が進行すると次第にさまざまな変化があらわれます。

・なんとなく元気がない
・寝ている時間が増える
・ふらつく
・よだれを垂らす
・体重減少
・意識を失う
・痙攣発作

フェレットにとってインスリノーマはよくある病気で、一説には、3歳以上のフェレットの50%以上が発症するとのデータもあるんです。発症のメカニズムや予防方法はまだ解明されていませんが、遺伝的な素因や、炭水化物の多い食餌内容が発症に関係している可能性が指摘されています。

インスリノーマを見逃さないために

好発年齢である5歳以降は、6ヶ月に1度の頻度で健康診断を受けることが大切です。罹患率の高い病気ですから、ある程度の年齢になったら「インスリノーマの可能性」を念頭において様子を観察すると良いでしょう。「なんとなく元気がなく寝てばかりいる」というだけでは単なる「老化現象」にも思えますから、受診の必要性を感じにくいかもしれませんが、低血糖からくる他の症状も意識しておけば、判断の助けになります。

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インスリノーマの子のお世話は血糖管理がテーマに

重度の低血糖状態になると脳が正常に働かなくなり、繰り返せば脳の損傷を引き起こしますから、血糖管理を適切に行うことが不可欠です。頻回にフードを与えて空腹状態を作らないよう心がける必要があります。
「食べ放題スタイル」でフェレット任せにしていると食が進まないケースや、寝起きや運動後といった血糖値が低下しやすいタイミングでは、シリンジを用いてふやかしたフードを与える「強制給餌」が必要になることもあります。

プレイルームのフェレットーフェレットの高齢期に気をつけたい病気

(2)性ホルモンの過剰分泌でさまざまな症状が出る「副腎腫瘍」

副腎は各種ホルモンを分泌する臓器ですが、フェレットは副腎に腫瘍ができると性ホルモンの分泌が増えます。そのため、避妊・去勢手術を受けている子でも、以下のような発情時と似た状態が見られることがあります。

発情と似た症状

・外陰部の腫大
・乳腺が張る
・前立腺肥大
・オシッコがでにくい

この他にも、体重減少や脱毛、痒みなどがあり、特に脱毛は大半の子に見られます。

発情状態を迎えるだけでは、さほど深刻な事態にはならないように思えるかもしれません。しかし、女性ホルモンの過剰分泌により中毒症状を起こした場合は、貧血が進んで命に関わる事態になることもあります。また、腫瘍が悪性なら他の臓器に転移しますから、放置はできません。

副腎腫瘍の原因もまだよくわかっていないのですが、一部では、避妊・去勢手術を受ける時期や、人間と同じ部屋で、自然界とは異なる光周期のもとで暮らしていることとの関連性が指摘されています。電気を消したり、ケージにカバーをかけたりして、睡眠中に光が当たらないようにしてあげることで副腎腫瘍を防ごうという考え方もあります。

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「換毛期」か「脱毛」か 副腎腫瘍で毛が抜けることは知っておいて

副腎腫瘍の脱毛は、尾や腰から始まって徐々に広がり、最終的には全身の毛の大部分が脱けてしまうこともあります。換毛期で毛が抜けているのか、病気による脱毛か、判断に迷うケースもあるでしょう。専門家でなければ鑑別は難しいので、シニア期を迎えた子は副腎腫瘍の可能性を考慮して、念のため受診しておくと安心できます。

フェレットの健康寿命を伸ばすためにできること

病気を防ぎ、高齢期を元気に過ごすためのポイントを意識しましょう。

定期的な健康診断は重要ーフェレットの高齢期に気をつけたい病気

食餌内容・栄養バランスに気を付ける

身体が日々の食べ物によって作られるのは言うまでありません。食性にあったフードとおやつを選ぶのはもちろん、人間用の食べ物は与えないよう徹底してください。

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定期的な健康診断、獣医師との連携は必須

健康診断は、シニア期までは年に1度受けることが推奨されています。検査項目は獣医師の先生の考え方によってクリニックごとに異なるかと思いますが、3歳を過ぎたら、基本的な項目に加えて、血液検査もプラスするのが推奨されています。

病気の早期発見のため、5歳を過ぎたら6か月ごとに健康診断を受け、年に1回は X 線検査も受けましょう。歯周病と虫歯予防のため口の中のチェックも大切です。

健康診断を受けると、病気だけでなく、視力・聴力・内臓機能の衰えが見つかることもあるでしょう。老化による機能低下は止められませんし、対処の方法もありません。しかし、フェレットの身体に生じている変化を飼い主さんが知っておくことは非常に大切です。「よく聞こえていない」「ちゃんと見えていない」「食べたものを以前のようには消化できなくなってきている」と飼い主さんが理解しているからこそ、できるサポートも増えていきます。

眠るフェレットーフェレットの高齢期に気をつけたい病気

毎日の体調チェックで確認したいポイント

日々の健康観察では、元気に遊べていることはもちろん、嘔吐の形跡はないか、うんちの状態はいつもと変わりないか、食欲はどうか、倦怠感がないかに注目してあげてください。
また、定期的な体重測定で増減を確認することも大切です。フェレットは夏と冬で30%程度も体重が変化するという報告もあり、飼い主さんには判断が難しい部分もあるのですが、急激や大幅な増減に気づいたら医師に相談した方が無難です。

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毎日のスキンシップで体に触らせてくれる子なら、触り心地で毛並みの状態や、体型変化もチェックしてあげましょう。腫瘍が脇腹や脇の下、鼠径部の周囲にしこりとして現れることもありますから、体に触れた際に異状に気づいたら医師に相談しましょう。

高齢だからこそ防げる病気は対策したい「ジステンパー」と「フィラリア」

シニア期になるほど免疫力の低下から病気にかかりやすくなりますし、治療に耐えうる体力も減っていきます。だからこそ、防げる病気はできるだけ対策してあげたいもの。
イヌやキツネに共通の感染症で、接触感染・空気感染で拡がる「ジステンパー」にはワクチンが、蚊が媒介する寄生虫疾患「フィラリア」には予防薬があります。

フィラリアを媒介する蚊ーフェレットの高齢期に気をつけたい病気

ジステンパーのワクチンとフィラリアの予防薬はフェレット専用のものはありませんので、犬用を代用することになります。メリットだけでなく副反応や副作用のリスクも理解したうえで、最終的には飼い主さんの判断になりますが、基本的にはワクチン接種を受けさせておくことをおすすめします。ジステンパーとフィラリアは共に治療が難しく、致死率が非常に高い病気だからです。

ジステンパーは幼少期に2〜3回の接種を済ませた後、毎年、追加接種が必要です。フィラリアは、蚊の発生する時期になったら毎月、予防薬を投与します。年に一度、月に一度のタイミングですので、「うっかり忘れ」が起こらないよう気をつけましょう。

健康管理に気をつけながら、年齢を重ねたフェレットとの時間を大切に

食餌や健康チェックなど飼い主さんの日々のお世話の責任は増しますが、お互いの負担になりすぎないようバランス良く継続していけたら良いですね。

そして、どんなに注意し、愛情深くケアしてあげても、病気になる時はなってしまうもの。飼い主さんは自分を責めすぎないようにしてください。
フェレットの看病や介護は決して楽しいことばかりではないかもしれませんが、縁あってお迎えしたからこそ一緒に過ごせる時間の一部でもあります。前向きに捉えてサポートしていただけたら、フェレットにとってこんなに幸せなことはないでしょう。


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橋爪宏幸

フェレット情報局編集長。 フェレット専門店フェレット・リンクのオーナー。 ExoticpetSaver FirstResponder/ExoticpetSaver Emergency Rescue Technician。 まだまだ分からないことが多いフェレットの世界。フェレットとの暮らしに少しでもプラスになるように、世界中からフェレットの情報を集めて発信していきます。