フェレットくんと暮らす飼い主のみなさん、こんにちは。
フェレット情報局は、フェレットの生態・お世話の仕方について、専門店『フェレットリンク』のスタッフが発信するメディアです。
今回のテーマは、フェレットの「おやつ(間食)」。
人間の場合、お気に入りのおやつを食べると気持ちがほっこりしますし、3度の食事で不足する栄養をおやつで補うこともありますよね。フェレットくんではどうでしょうか?
目次
フェレットにおやつは必要?
そもそも、フェレットにおやつを与える必要はあるのでしょうか?
【フェレットのエサの与え方】食べ放題でいいの?フードの変更方法は? でご紹介したように、小分けにして1日に何度も食べるのがフェレット流。そして、総合栄養食のフード(ドライフード)を適量与えていれば、必要な栄養はフードから摂取できています。
栄養補給や小腹を満たすという観点からは、フェレットに「おやつ」を積極的に与える必要はないんです。
フェレットと飼い主さんとのコミュニケーションに大活躍のおやつ
一方で、フェレットくんと飼い主さんがコミュニケーションを取るうえで、おやつはとても効果的なツールです。
お風呂や病院受診などの際におやつがあれば、フェレットくんに協力してもらいやすいこともあるでしょう。また、トイレトレーニングに成功したタイミングでおやつを与えれば「よくできたね」と伝えられるので、望ましい行動の強化につながります。
ただし、おやつを与えすぎて食生活が乱れたり、栄養が偏ったりすることもあります。いくらコミュニケーションに役立つとはいえ、病気の原因になっては元も子もありません。私たち人間でも同じですが、おやつは「選び方」「与える量」が大切です。
フェレットくんのおやつの「選び方」と「与え方」
おやつの選び方も、基本的にはフードの選び方と同じです。パッケージを見て、原材料と栄養成分の表示を確認しましょう。
「少しだけ」でも甘いものは避けて
【フードと栄養】フェレットのエサは何がいい?選び方のポイントを解説 でご紹介した通り、フェレットは完全な肉食動物。動物性タンパク質と脂肪が豊富で、糖質・繊維質をほとんど含まないのがフェレットの理想の食餌です。
おやつだからといって、フェレット本来の食性に合わないものを与えて良いわけではありません。特に気をつけたいのは甘いものです。人間よりもはるかに体が小さいフェレットにとっては、私たちの「少量」が「大量」であることを忘れないでください。
「与えすぎ」厳禁 おやつは摂取カロリーの10%まで
おやつの与えすぎでフードが食べられなくなっては本末転倒ですし、肥満につながります。目安として、おやつから摂取するカロリーは1日の総摂取カロリー(※)の10%までに抑えることが望ましいとされています。
※フェレットの正確な栄養要求量は、定められた飼料を用いた給餌試験によって決定されていませんが、1日に必要な代謝エネルギーは、体重1kgあたり200~300kcalと推定されています。
さらに成長期、妊娠、授乳期には維持量以上のエネルギー摂取が必要であると考えられています。
フェレットにおすすめのおやつのアイデア
具体的に、どんなおやつをフェレットに与えればよいのでしょうか。
市販のフェレット用スナック
フェレット用として売られているおやつでよく見かけるのは、ジャーキータイプのものや、ゼリー状・ペースト状のものです。フェレット用とうたっていても小麦粉などの糖質が多く含まれる製品もありますから、成分表示を必ずチェックしましょう。
ドライフルーツにも注意してください。ドライフルーツは体に良さそうなイメージがあり、与えても問題なさそうに思えるかもしれません。しかし、ドライフルーツは多量の糖質を含みます。特にレーズンは、フェレットへの毒性も指摘されているので、与えてはいけません。
関連コラム:【中毒予防】フェレットに与えてはいけない食べ物・誤食に注意したいもの
また、他の動物用のおやつがフェレット向けに売られていることもありますよね。高タンパク質・高脂質・低炭水化物であれば、フェレットに与えることは可能です。
おすすめは「子猫用のおやつ」。成猫用よりもタンパク質や脂質が多く配合されているので、フェレットが求める栄養バランスに合致しやすい傾向があります。
関連コラム:キャットフード・ドックフードはフェレットに与えていいの?/【フードと栄養】フェレットのエサは何がいい?選び方のポイントを解説 より
サーモンオイル・サーモンペースト
日本ではまだ入手しにくいのですが、サーモンオイルやサーモンペーストは海外の飼い主さんたちの間では代表的なおやつです。日本では「レコンヴァーレス ペッペルパステ」という商品がこれにあたります。
特に、サーモンオイルは毛皮の光沢をアップさせる、抜けた毛が毛玉となって消化管につまるのを予防するなどの効果があるとされているうえ、食いつきもいいので非常に人気です。
ただし、サーモンオイルはしばしば与えすぎになりがちとも言われています。与える場合はメーカーの定める量を守ってください。
飼い主さんが調理した肉や卵
人間用にスーパーで売られている鶏肉や豚肉も、フェレットのおやつになります。魚を与えても構わないのですが、自然界のフェレットが食べているのは主に肉で、肉の方が好きな子が多いようです。
肉・卵は、細菌や寄生虫による食中毒のリスクがあるので、加熱してから与えてください。味付けは不要です。なお、骨つきの肉は避けましょう。骨は加熱すると砕けやすくなり、尖った破片が消化管を傷つけるおそれがあります。
フェレットに生肉・生卵を与えてはダメなのか?
肉食獣は自然界では生肉を食べていますし、フェレットのご先祖様のヨーロッパケナガイタチも同様です。そのため「加熱調理は必要ないのでは?」と思う飼い主さんもいるかもしれません。
フェレットに非加熱の肉や卵を与えることには、飼い主さんや専門家の間でもさまざまな意見があります。「加熱しないからこそ得られる栄養がある」という考えのもと、生肉を積極的に与えている飼い主さんもいます。
しかし、ペットのフェレットは、野生のイタチとは生活環境が大きく異なります。生まれた時から人間と一緒に衛生的な環境で暮らし、ドライフードを食べて成長しています。野生では生肉が当たり前とはいえ、ペットのフェレットが同じことをできるとは限りません。
フェレット愛好家・専門家で作られる、もっとも権威ある団体のひとつAmerican Ferret Association(AFA)でも、生肉食については専門のコンサルタントに相談することを推奨しています。安易に非加熱の肉を与えることは避けた方が無難です。
栄養満点のおやつ、フェレット用の「ダックスープ」って知ってる?
ダックスープとは、フェレット用の高栄養の流動食のこと。
栄養補給のためのおやつは原則、不要とご説明しました。しかし、体調不良などで食欲が落ちドライフードが十分に食べられない、体重が減ってきたなどの際にはおやつでの栄養補給が必要です。そんな時のためのスペシャルなおやつが「ダックスープ」。人間でいうところの「おじや」みたいなものですね。
あまり聞きなれない「ダックスープ」ですが、海外の飼い主さんの間では一般的で、療養食として与える他、サプリメントの感覚で時折、おやつとしても与えるのだとか。
海外では粉末を水に溶かすだけの手軽な製品も販売されていますが、日本では飼い主さんが一から手作りする必要があります。
ダックスープにはさまざまなレシピがあり、基本はドライフードを粉末状にしたものにフェレット用の栄養剤、サプリメント、ピューレ状にした加熱済みの鶏肉を加え、水や鶏ガラスープでゆるいペースト状に伸ばして作ります。レシピによっては、山羊のミルクや卵黄を配合するものも。
自力で食べられない場合は、スプーンで口元に運んであげたり、シリンジで与えたりします。
ダックスープは薬ではないので、食欲不振が続く際は早急な受診が基本ですが、回復期の栄養補給手段として知っておいていただければと思います。
おやつをうまく取り入れて、フェレットくんとの毎日をより楽しいものに
おやつはフェレットくんと飼い主さんのコミュニケーションツールだけでなく、緊急時には栄養補給の手段になることもあります。何より、フェレットくんが美味しそうに食べる姿、おやつをもらう時の嬉しそうな様子をみられるのは幸せな時間ですよね。
おやつと上手に付き合って、フェレットくんとの日々をもっと楽しみましょう。
<主要参考文献>
Cathy Johnson-Delaney(2016). Ferret Medicine and Surgery (English Edition)
田向 健一『フェレット飼育バイブル 長く元気に暮らす 50のポイント コツがわかる本』メイツ出版、2021年
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