フェレットくんと暮らす飼い主のみなさん、こんにちは。
フェレット情報局は、フェレットの生態・お世話の仕方について、専門店『フェレットリンク』のスタッフが発信するメディアです。
今回のテーマは、フェレットくんが口にしてはいけない物。人間が日常的に食べるものでも、フェレットにとっては猛毒というケースがあります。また、食品ではないものを誤って口にしてしまう「誤食」にも気をつけなければなりません。
フェレットが食べたら危険なものと、その対策について考えてみましょう。
目次
フェレットが「何」を「どれだけ」食べたら危険? わからないことが多いから慎重な判断を
はじめにお伝えしておきますが、今回ご紹介するのはフェレットの体内に取り込まれた際に危険性があると「考えられている」もの。毒性について「諸説ある」ものも一部、含まれています。
これらの食品や物質は、主に、人間や他の動物での事故・事例に基づいてリストアップされています。フェレットに対する毒性が試験ではっきりと証明されているものはほんの一部にすぎません。具体的にどの成分がどのように作用するため有毒なのか、解明されていないものも多くあるんです。
さらに、後ほどご紹介する植物の場合は「根っこや葉・花などを、どの程度摂取したか」によっても症状の現れ方は異なります。結局、どんなものをどれだけ食べたら危険なのか、はケースバイケースとも言えるのです。
では飼い主さんはどうすれば良いのでしょうか?愛するフェレットくんを確実に守るには、考えられるリスクは避けたいですよね。神経質になりすぎる必要はありませんが、慎重に判断するに越したことはないはずです。
そこで今回は、フェレットが避けるべきと一般に考えられているものを幅広くリストアップしてみます。
【食べ物編】与えちゃダメ!フェレットが食べたら危険・有毒な食品
フェレットには有害だと考えられている食品には、以下のようなものがあります。
順番に見ていきましょう。
チョコレート
チョコレートには人間以外の多くの動物にとって有毒な「メチルキサンチン」という物質が含まれています。メチルキサンチンの摂取量が体重1kgあたり10〜15mgで嘔吐と下痢が、40〜50mgで頻脈が出現し、100mgを超えると命を落とす危険もあります。
チョコレートに含まれるメチルキサンチンの量は種類によって異なりますが、セミスイートチョコレート30gには約150mgのメチルキサンチンが含まれるというデータもあります。これを体重1.5kgのフェレットが食べた場合、1kgあたりのメチルキサンチン摂取量は約100mgとなり、命に関わる事態にもなりかねない量です。
チョコレート30gは一般的な板チョコレートに換算すると、半分より少し多いくらいの量。最近では高カカオをうたった製品も販売されていますから、「少しだけ」でもチョコレートを与えることは絶対に避けてください。
ぶどう・レーズン
定期的に摂取することで嘔吐や下痢、そして腎不全を引き起こす可能性が指摘されています。
甘いものはフェレットにとって「美味しい」けれど、必要のないもの
チョコレートやぶどう・レーズンなどで怖いのは、フェレットが好んで食べてしまう、または、欲しがるので飼い主さんが与えてしまう可能性があることです。
甘味刺激に対する嗜好性を調べたところ、フェレットは果糖を好むことがわかりました。甘いものは人間同様、フェレットにとっても「美味しい」んですね。実際、おやつとしてレーズンを与えているという話も聞きます。
しかし、フェレットが「甘いもの」を摂取するのは好ましくありません。少量与えたからといってすぐ命に関わるような中毒症状を呈するわけではありませんが、甘いもの(糖質)や穀類はフェレットが栄養素として利用できないものです。与えすぎは消化不良につながる可能性があります。さらに、甘いもので満腹になってしまえば、必要な栄養素であるタンパク質や脂質を十分に摂れず、相対的に栄養不足になる恐れもあります。
糖質を栄養として摂取する体の仕組みを備えている私たち人間ですら、甘いおやつを食べすぎるとなんとなく体調が振るわないもの。本来、炭水化物を摂取しない食生活をしているフェレットですから、なおさら「摂りすぎ」に注意が必要です。おねだりされても、甘いものの量にはくれぐれも気をつけてください。
アボカド
アボカドに含まれる「ペルシン」は、一部の動物の体内では消化できず、嘔吐や下痢を引き起こしますが、フェレットでもその恐れがあると考えられています。
タマネギ・ニラ・ニンニク・長ネギ・らっきょう
ネギ類には赤血球が壊れる「溶血性貧血」を引き起こす成分が含まれます。
イカ・タコ・カニ・エビ・貝類
軟体動物や甲殻類・貝類にはビタミンB1を壊す成分が含まれており、ビタミンB1欠乏症を発症させるリスクがあります。
アーモンドやピーナッツなどのナッツ類
青酸化合物である「アミグダリン」という成分が含まれるため、危険とされています。
ウメ・サクランボ・モモ・ビワ・アンズ・スモモ
未熟な果実や種の部分にはナッツ類と同様にアミグダリンが含まれます。
紅茶・緑茶・コーヒー
お茶類やコーヒーにはチョコレートと同じく、カフェインやテオブロミンが含まれます。コーヒーやお茶を与えるケースは稀だと思いますが、ゴミ箱に捨てたティーパックやコーヒーフィルターにも注意が必要です。
キシリトール
虫歯予防効果で有名なキシリトールは、ガムやお菓子などに配合されていますが、イヌで毒性が報告されておりフェレットでも同様とされています。摂取したら急速に低血糖発作を起こし、肝不全を引き起こす可能性があります。キシリトールは口に入ると「甘み」として感じられるため、誤食が起こりやすいと考えられます。
塩分濃度の高いもの
塩気の強い食べ物を摂取すると塩分中毒を起こす可能性があります。フェレットに限ったことではありませんが、塩分のとりすぎは時に命に関わることも。人間用に味付けされたもの、特におつまみとして塩漬けされた肉や魚はフェレットに与えてはいけません。
繊維質の多く含まれるもの
甘いものはフェレットがあえて摂取する必要のない栄養素だとご説明しましたが、繊維質も同様です。繊維たっぷりの果物や野菜をフェレットは栄養として利用できず、消化不良や下痢を起こします。バナナやりんごなどはなんとなく「体に良さそう」と思いたくなりますが、生であれ、ドライフルーツであれ、与えてはいけません。
【誤食・誤飲】食べ物でないものを口にしてしまう!特に注意したいもの
フェレットが口に入れるのは食べ物だけに限りません。異物を食べてしまう誤食は、フェレットで起こりやすい事故です。
飼い主さんならご存知の通り、フェレットは好奇心が非常に強く、探索と冒険が大好きです。飛び抜けた運動能力のおかげで高い場所や狭いところをものともせず、強い力で引き出しにもアタックします。さらに頭が良いので、普段飼い主さんが手にとっているものを覚えていて、興味を示すことも。未知のものに出会ったフェレットが「ちょっと噛みついてみる」「味見してみる」という行動に出るのはごく自然なことです。
フェレットの口に入るサイズのあらゆるものに誤食のリスクがありますが、特に気をつけたいものを見て行きましょう。
殺虫剤 ・殺鼠剤
ゴキブリ・ハエ・ハチ・クモを撃退するスプレーや、アリ・カタツムリ駆除用のエサ、殺鼠剤はフェレットにも有毒です。フェレットが過ごす場所の付近に散布しないのはもちろん、おとりのエサに惹かれたフェレットが食べてしまわないよう、注意しなければなりません。
イヌ・ネコ用のノミ・ダニ駆除製品の不適切な使用は、フェレットに有害な影響を与える場合があります。これらは使用する前に 、必ず獣医師に確認してください。
また、アルコール系のノミ取りスプレーを吸い込むことでアルコール中毒を起こす可能性があります。アルコールは皮膚からも吸収されるので、フェレットの身体につけないようにしてください。
石鹸
石鹸や洗剤に広く含まれる界面活性剤の成分は、生体にとって刺激となり、フェレットが摂取した場合に嘔吐や下痢を起こす危険があります。
石けんは動物や植物の油脂から作られますが、油は肉食のフェレットにとって主要なカロリー源。海外ではおやつとしてサーモンオイルなどの油を与えることも珍しくないんです。動物性の油から作られる石鹸は、フェレットくんにとって魅力的に感じられるのも無理はありません。最近は、パーム油のように植物性油脂を原料にした石鹸が主流ですが、油から作られているのは同じです。誤食が発生しやすいことを念頭においてください。
エッセンシャルオイル
誤食とは少し異なりますが、家庭用洗剤や噴霧タイプの芳香剤・消臭剤などに配合されているエッセンシャルオイルをフェレットが吸い込むことも危険です。
フェレットはエッセンシャルオイルに含まれる「フェノール」を人間のようには代謝できず肝臓に蓄積します。そのため、体内に取り込みすぎると、有毒なレベルに達する恐れがあるんです。特に有毒なのはティーツリーオイルですが、すべてのエッセンシャルオイルにリスクがあるとされています。
ペットがいると、化学洗剤を避けて自然派の製品を選ぶ家庭も多いかと思いますが、エッセンシャルオイルは自然派・エコをうたった製品にもよく使用されています。また、飼い主さんがエッセンシャルオイルを基礎化粧品に混ぜて使う場合、肌に残るオイル成分をフェレットがうっかり舐めてしまうかもしれません。香水も同様です。
エッセンシャルオイル成分の含まれるものはフェレットが出入りする室内では使用しない、フェレットと触れ合う人は使わない、などの注意が必要です。
フェレットの目線になると危険!除光液
「吸い込むと危険」というものでは、マニュキュアを落とすための除光液も気をつけるべき物質です。除光液に含まれる「アセトン」が気化したものを吸い込んでしまう可能性があります。
アセトンは揮発しやすく、気体になったアセトンは空気より重いため、低い所に溜まります。人間であれば足元ですが、フェレットでは顔の位置。もろに吸い込んでしまうことになります。
実際、床に寝かせている赤ちゃんの近くでお母さんが除光液を使っていて、赤ちゃんがアセトン中毒になってしまったという事故がありました。体高の低いペットでも同様の危険が指摘されています。除光液はフェレットの出入りする部屋では使用を控えましょう。
歯磨き粉
歯磨き粉には、キシリトールやフッ素が含まれているものがあります。キシリトールの毒性はすでに説明した通りですが、フッ素もフェレットにとって有毒です。心拍数の異常、消化器官の不調、震えや衰弱などの神経症状を引き起こし、命に関わる事態になることもあります。
人間用の医薬品
解熱・鎮痛剤で代表的なイブプロフェンやアセトアミノフェンを常備している家庭も多いと思いますが、これらを摂取すると腎臓や肝臓に障害を起こし、致命的な事態に陥ります。また、風邪薬や抗うつ薬もフェレットにとって有毒です。さらに、包装フィルムごと飲み込んでしまった場合は、鋭利なフィルム片が消化管を傷つける恐れもあります。
植物
観葉植物の根っこを掘り返して遊ぶのが好きな子も多いのですが、多くの観葉植物はフェレットにとって有毒と考えられています。以下の種類は毒性が強いので、フェレットが触らないようにしてください。腎臓や肝臓の障害を引き起こす可能性があります。毒素は葉だけではなく花、球根、茎にも含まれる可能性があり、枯れ葉や落ちた花びらにも注意が必要です。
他にも有毒な種類はたくさんあると考えられますが、室内に持ち込まれやすいのは、これらの種です。鉢植に限らず、切花で花瓶に活けるケースも気をつけてください。
また、毒性がなくとも、トゲが皮膚や口に突き刺さる危険もあるので、バラやサボテンにも注意が必要です。さらに鉢植えの場合は、土に含まれる化学肥料にも気をつけてください。
タバコ
ニコチンはフェレットにとって有毒です。吸い殻や灰皿の置き場には注意しましょう。
不凍液
自動車の冷却水である不凍液に含まれるエチレングリコールは生体にとって猛毒です。エチレングリコールは甘い味がするため誤食を起こしやすく、外飼いのネコでよく中毒事故が起こっています。
室内飼いが基本のフェレットですが、散歩で外に出す際には気をつけてあげてください。
フェレットくんを中毒・誤食から守るためにできること
フェレットくんの体内に有毒・危険なものが入らないよう、飼い主さんはどんな配慮をすれば良いのでしょうか。
人間の食べ物は与えない方が無難
加工食品は原材料がはっきりしないケースもあるので、人間の食べ物をフェレットに与えることは基本的にリスクだと考えてください。
家族のような存在だからこそ、自分が食べているお皿から一口、フェレットくんに分け与えたくなる気持ちもわかります。でも、食べさせてしまってからでは取り返しがつきません。特に、お迎えしてすぐの頃などフェレットとの生活に慣れるまでは「フェレットフード以外の食べ物は与えない」くらいの気持ちでいた方が安全でしょう。
フェレットを飼育する室内は、物の置き場に細心の注意を
フェレットくんは、ゴミ箱、引き出し、キャビネット、家具の中や下を覗き込むのが大好き。少しの隙間でもあっという間に見つけ出して入り込みますし、床に落とした錠剤や軟膏のチューブ、小瓶、ボトル、容器なども、すぐ「味見」しようとします。
気がついたらお菓子の袋をかじっていた、生ゴミの入った袋に頭を突っ込んで中身を食べたかもしれない、といった話は珍しくありません。食べ物をフェレットの開けられない場所にしまうのはもちろん、ゴミ箱もフェレットの手の届くところに置かないことが大切です。フェレットを遊ばせる前には床を掃除し、薬や食べこぼしなどが落ちていないか確認しましょう。
特に気をつけたいのが、チョコレートと人間用の薬です。これらはカバンやポケット、財布の中に一粒だけ・一錠だけしのばせておくといったケースも多いため、「人間のウッカリ置き忘れ」リスクが高く、さらに、少量の摂取で重篤な症状が現れる可能性があるからです。
有毒なもの・危険なものは家庭に持ち込まない
フェレットにとって有毒なものは飼育する部屋には置かないのはもちろんですが、できることなら処分してしまうのが確実です。フェレットは、子供用のボトルからキャップをこじ開けたり、重いプラスチック容器を噛み砕いたりすることもあります。保管場所となる収納棚や引き出しにはベビーロックや鍵をつけるなどして、フェレットが忍び込めないようにしてください。
事故が起こりやすいのは「普段と違うシチュエーション」
思わぬ事故が起こりやすいのは、普段と違う状況です。クリスマス前にツリーを出した、新しいオブジェを壁にかけた、など、目新しいグッズを持ち込んだタイミングが特に危険です。見慣れないものはフェレットにとって恰好のおもちゃになりますから、興味津々で近づきます。十分に注意してください。
ケージから出して遊ばせるなら「見守り」は必須
事故の多くは飼い主さんが目を離した隙に起きます。部屋で遊ばせるときには見守る、そばについていられない時はケージから出さない、などの心がけで事故のリスクは減らせます。
また、見守りをしていればフェレットが有毒なものを食べてしまった際も、何をどのくらい食べたかがわかるので、診断・治療もスムーズです。
中毒だけじゃない!人間との暮らしには危険がいっぱい
布やプラスチック製品などは、中毒を起こす毒性はなくとも、消化管を傷つける、腸に詰まるなどのリスクがあります。おもちゃやハンモック、タオル、ゴム製のものはもちろん、中には「まさかこんなものは食べないだろう」と思われるような硬いプラスチック製品などもバリバリと噛んでしまうやんちゃな子もいます。
ある程度の大きさがあるものはもちろん、小さなものでも複数個を誤飲すれば消化管の閉塞を起こしますし、プラスチックやガラス片など鋭利なものは消化管を傷つけます。ヒモ状のものは引っかかったり絡まったりして、腸の壊死につながることも。中毒を起こすものでなくとも、誤食には十分気をつけなければなりません。
様子がおかしい!中毒・誤食が疑われる場合は?
誤食が疑われる場合は、自己判断での経過観察はせず、すぐに獣医師さんに見せてください。早急な対応がフェレットくんの救命に繋がります。
中毒・誤食が疑われるケースでは、「何をどのくらい食べてしまったのか」が治療の大切な手がかりになります。受診の際には、口にした可能性があるものの残りや、成分のわかるもの(製品パッケージなど)を持参しましょう。
活発で好奇心旺盛なフェレットくんだからこそ、安全には飼い主さんが十分に配慮してあげて
人間と暮らすフェレットくんは、食べ物に困ることはありませんし、外敵に襲われる心配もない代わりに、自然界では出会わないような危険と隣り合わせで生きています。食べてしまった量が人間にとっては「ごくわずか」であっても、体の小さいフェレットくんにとっては、大きな影響を及ぼしかねません。
飼い主さんはフェレットにとって有毒な食品・誤食したら危険なものを知り、安全な暮らしをサポートしてあげましょう。
<主要参考文献>
Cathy Johnson-Delaney(2016). Ferret Medicine and Surgery (English Edition)
田向 健一『フェレット飼育バイブル 長く元気に暮らす 50のポイント コツがわかる本』メイツ出版、2021年
Erinn Whitmore, AFA Education Committee. Common Household Poisons and Dangers for Ferrets


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