今回は、ウサギの食餌 (牧草やペレットフード等)がどのような成分で構成され、ウサギはどのくらいの量を1日に必要としているのか、各々がどのような役割を果たすのか、その成分量の測り方とともに解説します。

食餌の分析

食餌の成分は、その化学的性質や利用面での違いから水分、灰分、タンパク質、脂肪、可溶無窒素物(NFE)及び繊維に分けられます。これら6成分は一般成分 と呼ばれ、重量測定など比較的簡単な方法で測定可能です。食餌中にはこれら一般成分のほかに、体に備わる機能(正常な発育や免疫等)を維持するために必要なビタミン、無機成分(ミネラル)、酵素、ホルモン等も含まれます。

水分の測り方

ウサギは乾燥した食餌のみを与えられた場合は年齢や体重により個体差はありますが、体重約2 kgのウサギでは200ml程度は飲水するでしょう。
食餌の分析では主として加熱乾燥法が用いられます。 具体的には細かく砕いた食餌をサンプルとして用い、サンプル約1 gをあらかじめ乾燥させ恒量(それ以上乾燥させても重量が変化しない状態の重量) を求めておいた容器に入れます。サンプルが入った容器を105℃の恒温乾燥器に入れて8時間もしくは135℃で2時間乾燥した後、デシケーター(吸湿を防ぐための容器)に入れて冷ました後で重さを測ります。乾燥により重さが減少しますので、この減少した重さを水分量とします。

灰分(かいぶん)の測り方

ウサギは灰分としての1日必要量は明らかとなっていませんが、体重約2 kgの場合、カルシウムやリン、カリウム等のミネラルを合わせて約7~10 g必要なようです。
水分と同様に灰分も加熱により測定します。ただしその温度は550℃~600℃となり、高温乾燥器またはマッフル炉(加熱対象が燃料およびガスや灰を含む燃焼生成物と隔離されている炉)などが用いられます。サンプル約1 gをあらかじめ乾燥させ恒量を求めておいたルツボ(容器)に入れ、550℃で2時間程度灰化させます。その後、デシケーター内で灰となったサンプルが入ったルツボを冷まし、重さを測ります。灰化後に残った重さを灰分とします。

タンパク質の測り方(ケルダール法)

ウサギは成長中と大人でタンパク質の要求量が異なりますが、体重約2 kgの場合で、1日あたり12~15 gのタンパク質を必要とします。
タンパク質量を測定するためには、サンプル約0.1 gを濃硫酸(酸性の液体)と共に加熱分解し、この液に水酸化ナトリウム溶液を加え、強アルカリ性の液体にし、加熱蒸留するとアンモニアがでてくるので、そのアンモニアを特殊な液体(アンモニアが加わると赤色から緑色になる)に吸収させて回収し、ごく少量の硫酸が溶けた液体を徐々に加えていき、加えた液体の量を用いて、全窒素量を計算します。算出された窒素量に6.25(=100/16:タンパク質の窒素含有量は16%である場合が多いため)を掛けて粗(おおよその)タンパク質含量とします。他の成分もそうですが、成分の前に「粗」と付く理由としては厳密にその成分のみを表していない場合があるためです。

脂肪の測り方

体重約2 kgのウサギの場合、1日あたり約1~2 g程度を必要とします。
ソックスレー(Soxhlet)脂肪抽出装置を用い、エーテルでサンプルから脂肪を抽出することにより定量されたものを粗脂肪(エーテル抽出物)といいます。粗脂肪の中には、脂肪の他に色素類、ロウ、有機酸などが含まれることがあります。

繊維の測り方

体重約2 kgのウサギの場合、1日あたり最低でも14 g以上必要とします。この量を下回ると下痢やうっ滞を引き起こすと考えられています。
サンプル約1 gを1.25%硫酸で30分間煮沸した後、水を加え一昼夜放置し、沈殿物を捨てないように気を付けながら水を捨てます。その後、1.25%水酸化ナトリウム溶液を加え30分間煮沸した後、同様に水を加え一昼夜放置し、水を捨て、沈殿物をろ紙に回収して重さを測り、沈殿物から灰分量を引いたものを粗繊維とします。

可溶無窒素物の計算方法(Nitrogen Free Extract; NFE)

NFEは食餌の熱量(カロリー)を計算する際に使用されます。NFEの1日あたり必要量ははっきりと定められていません。
可溶無窒素物は100から水分、タンパク質、脂肪、繊維、灰分の各含量(%)を差し引いて求めます。可溶無窒素物の主成分は糖類ですが、そのほか有機酸やペクチン、ゴム質、ペントサン、リグニンの一部が含まれます。

消化率の調べ方

食餌の消化率を求めることで、ウサギがその食餌(例えば牧草)からどの程度栄養素を利用できているのかを知ることができます。この情報が一日あたりウサギに与える食事量の決定につながるため、有益な情報となります。
消化率は食べた養分量から糞中に排泄された養分量を差し引いた量の食べた養分量に対する割合として求めますが、糞中には食餌に由来する不消化物以外に腸粘膜や消化液、腸内微生物やその生産物などの代謝性物質が含まれるため、以下の式で求める値は厳密には見かけの消化率となります。なお、水分と灰分(ミネラル)は消化吸収後に消化管内に排出される量が多く、消化率は通常求めません。
消化率は糞をすべて回収して計算しますが、食餌の影響をなくすためにウサギでは約1週間、予備試験した後に行います。採取した糞は乾燥後、食餌と同様に成分分析を行い、次式により消化率を算出します。
上記は見かけの消化率の式となりますが、真の消化率を測定することも可能です。その測定方法は、消化率粗測定したい成分(例としてタンパク質)を全く含んでいない食餌を約7日間与え、その後5日間程度、糞を回収します。この時の糞には食餌由来ではなく、消化管内壁や消化管内微生物由来のタンパク質が排出されます。この成分を内因性成分といい、真の消化率の計算式は以下の通りとなります。

通常、消化率といえば「見かけの消化率」を指します。しかし、ヨーロッパの国々を主体としてウサギの食餌原料に対する真の消化率が求められてきました。次回はこの取り組みとその結果得られたデータについてご紹介致します。

 

参考文献

小野寺良次, 星野貞夫, 板橋久雄, 日野常男, 秋葉征夫, 長谷川信 著. 2006. 家畜栄養学. 川島書店.
The European Pet Food Federation (FEDIAF). (2013). Nutritional guidelines for feeding pet rabbits, 1-42.


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川﨑浄教
一般社団法人うさぎの環境エンリッチメント協会 理事 香川大学 農学部助教 農学博士 現役の研究者としては、日本唯一のウサギ栄養学の研究者