食餌中の繊維について

牧草やペレットといったウサギの食餌は成分の多くが食物繊維であるといわれています[1]。そこで今回は食物繊維について解説します。食物繊維は小腸で消化吸収されないもののことで、水に溶けるもの(水溶性)から水に溶けない(不溶性)のものまで色々な種類があります。表1は成長中のウサギ用ペレット(牧草の給餌を必要としない完全栄養食版)の成分値ですが、食物繊維(表1の総食物繊維)は約50%となっています。表1を見ていただければ、繊維といっても色々な種類があることが分かりますが、それぞれの分析方法は次回以降に記載することにします。

表1.成長中ウサギ用ペレットの成分値

成分値 平均値 実測値
中性デタージェント繊維(aNDFom) 368 248-443
酸性デタージェント繊維(ADFom) 196 135-284
酸性デタージェントリグニン(ADL) 56 27-195
ヘミセルロース 172 59-251
セルロース 140 42-220
粗繊維 166 122-244
水溶性繊維 109 61-188
総食物繊維 478 352-560
繊維以外の物質
 デンプン 176 82-324
 糖類 53 31-163
 粗タンパク質 176 134-232
 粗脂肪 32 10-71
aNDFomは熱耐性アミラーゼと中性デタージェントで処理後灰分を除いた値

総食物繊維はaNDFomと水溶性繊維を足した値

食餌中の食物繊維はウサギの消化管内容物の通過時間に影響を与え、盲腸内微生物の増殖にも利用されます[1]。表1に記載されている繊維類はどういったところに存在するかというと植物細胞の細胞壁中に多く含まれています[1]。植物細胞の構成を簡略化すると図1のようになります。図1はとても単純に植物細胞を描いているため、大まかな繊維の名称しか挙げられていませんが、より詳細に食物繊維を分類すると図2のようになります。

図1.植物細胞壁の構成成分 (Gidenne et al. 2010 [1]より作成)

図2.食物繊維の分類 (Gidenne et al. 2010 [1]より作成)

食物繊維の化学的特徴について

図2のように食物繊維は大きく細胞壁成分と細胞質(細胞壁で囲われた細胞の中身のようなもの)成分に分けられます。さらに、細胞壁は水溶性成分と不溶性成分に分けられます。それぞれの物質がどこに当てはまるかは下記の通りです。

・細胞壁成分

・水溶性成分(β-グルカン、アラビノキシラン、キシログルカン、ガラクタン、ペクチン質)

・不溶性成分(リグニン、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン質)

・細胞質成分(オリゴ糖類、フラクタン、マンナン、レジスタントスターチ)

上記の食物繊維のほとんどをウサギは消化できませんが、盲腸内に棲む微生物はこれらの食物繊維の多くを分解し、別の物質に変換することができます。その代謝過程(体内でエネルギーに変換する過程)は図3となります。

図3.食餌中の繊維の代謝過程

図3はとても単純に描いていますので、食物繊維の代謝過程はもっと複雑なものになります。食物繊維は食餌中の糖質(炭水化物)の一部です。ウサギの場合、盲腸内に流入した食餌中の糖質は微生物によって分解され、ヘキソースやペントースになります。ヘキソースは炭素(C)が6個ある糖質のことで、主にブドウ糖(グルコース)やガラクトース、フルクトースなどがあります。また、ペントースは炭素が5個ある糖質のことで、リボースやキシロース、キシルロースなどがあります。これらの単糖類は解糖系(グルコースなどの糖をエネルギーに変換する過程)に入り、ピルビン酸に変えられた後、エネルギー源として利用可能な短鎖脂肪酸や。ウサギの栄養学(3)でも述べましたが、食物繊維は微生物による分解・発酵を受け短鎖脂肪酸となった場合、発酵槽である盲腸から血管を介し肝臓に運ばれエネルギー源として利用されます。このエネルギー源からエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)を生成できる量は我々ヒトがグルコースを変換し得ているATP量に比べると低い値となっています。ウサギとヒトが同じ体重だった場合、ウサギの方がエネルギーをより多く必要としているということをウサギの栄養学(1)でも触れましたが、ウサギの食餌中にはグルコースのようにエネルギーに変えやすい成分があまり含まれていないため、小さな体に対し多くの食餌を取る必要があると言えるでしょう。

具体的には、1 mol(物質量の単位、物質ごとに重さが異なる;グルコースの場合は1 molで180.16 g)のグルコースから38 molのATPが生成されます[2]。また、脂質では1 molのパルミチン酸(16:0)の場合、129 molのATPが生成されます[2]。蛋白質は、アミノ酸の種類によって分解のされ方が異なるので、生成されるATP量を単純化することは難しいですが、1 molのアスパラギン酸から16 molのATPが生成されると言われています[3]。また、短鎖脂肪酸のうち、1 molの酢酸から10 molのATPが、1 molのプロピオン酸から17 molのATPが、1 molの酪酸から27 molのATPが生成されます[3]。これらの化合物からのエネルギー変換について単純な図を描くと図4となります。

図4.各化合物からのエネルギー生成過程

ATP生成量のみに注目するとグルコースが38 molなのに対し酢酸は10 molとだいぶ低い値なため、エネルギー変換効率が悪いのだなとの印象を持たれるかと思います。各化合物のエネルギー生成効率については、次回以降に解説することにしますが、実はウサギが主に利用している短鎖脂肪酸からATPへのエネルギー変換効率はグルコースに比べるとわずかに低い程度です。しかしながら、ウサギの主要なエネルギー源となる短鎖脂肪酸は微生物の分解により生じるものであり、微生物も食餌中の食物繊維を全て短鎖脂肪酸に分解できるわけではありません(限界がある)。つまり、繰り返しになりますが、ウサギはヒトよりも小さな体でエネルギーをたくさん得る必要があるため食物繊維を多くとり続ける必要があります。

参考文献

1    Gidenne, T., Carabaño, R., García, J., de Blas, C. 2010. Fibre Digestion. In: Nutrition of the Rabbit, 2nd Edition. CAB International, pp 66-82.

2   柳田晃良, 福田亘博, 池田郁男 編著. 2010. 新版 現代の栄養化学. 三共出版.

3   小野寺良次, 星野貞夫, 板橋久雄, 日野常男, 秋葉征夫, 長谷川信 著. 2006. 家畜栄養学. 川島書店.


The following two tabs change content below.
川﨑浄教
一般社団法人うさぎの環境エンリッチメント協会 理事 香川大学 農学部助教 農学博士 現役の研究者としては、日本唯一のウサギ栄養学の研究者