鬱滞(うっ滞)とは?

何らかの理由で胃または腸の動きが悪くなり、飲み込んだ毛や食べ物、異物などが消化できずに詰まったり、胃液やガスなどが溜まること。

毛球症や胃腸鬱滞(うっ滞)という名称が知られていますが、近年では総称して「ウサギ消化器症候群(RGIS)」と呼びます。

胃ガスによる胃拡張
写真提供:斉藤動物病院 院長 斉藤将之先生

腸ガスが溜まった状態
写真提供:斉藤動物病院 院長 斉藤将之先生

以下のような症状が出ます。

・食欲不振(食べる量が減る、まったく食べない)

・ウンチが出ない、異常がある(小さい、少ない、粘膜のついたウンチ)

・お腹を触られるのを嫌がる

・うずくまって動かない(歯ぎしりをする)

最初は「何となく元気がない?食欲がないかな?」程度でも、様子を見ているうちに急激に悪化することもあるので、早い段階で対処することが大切です。

ガスなどが溜まっていると、痛みでショック死してしまうこともあります。

右が正常な大きさ。左は小さい

形がいびつなウンチをするのもお腹の異常サイン

原因は?

ウサギ消化器症候群(RGIS)の原因は、大きく分けて2つ。

・胃腸の動きが悪くなる

・腸内細菌叢が乱れる

その原因となるのは主に、

・繊維質不足(牧草やペレットを食べず野菜やおやつなどが主食になっている)

・免疫力の低下(ストレス、不衛生な環境などにより)

です。

また、異物の摂取が原因となることもあります。

予防方法は?

●牧草を食べさせる

胃腸を動かすためにも、腸内細菌を正常に保つためにも、一番良いのは牧草を主食にすること。牧草をたくさん食べてもらうことです。

牧草の繊維質を摂取することで腸の蠕動運動を促すことが予防につながります。(ただし牧草だけでは十分な栄養を摂るのは困難なので、ペレットもしっかり与えましょう。)

でんぷん質の多いクッキーなどのおやつは、胃腸に負担をかけるのでNG。

もしも歯が悪いなどで牧草を食べるのが難しければ、繊維質が高く低カルシウムのペレットを多く与えるようにしましょう。

●水を飲ませる

毛づくろいで飲み込んだ毛などは、繊維質と水分をしっかり摂っていれば、固まることなく消化され排泄されます。しかし不足していると、胃の中で絡まって固まりとなってしまうことがあります。それがいわゆる毛球症です。

水をいつも飲めるように用意しておくことはもちろん、毎日の飲水量もチェックし水を飲む量が減っていないか気を配りましょう。

市販されているラキサトーンなどの毛球除去剤は、油分が多く含まれるため毛を流れやすくする効果はありおやつ代わりに与えるのはよいですが、それだけでは完全な予防にはなりません。

●運動をさせる

体を動かすことも大切です。ずっとケージの中で動かずにいると、胃腸の働きも悪くなります。

エネルギーを消費しないため食欲も落ちる→牧草を食べなくなる→ウサギ消化器症候群(RGIS)になる、ということも。

一日一回でもよいので、ケージから出して運動できる時間を作りましょう。

ただし、へやんぽさせるときは安全な環境を用意することが大切です。うさぎは何でもかじる習性があるので、口に入れたら危険なものは置かないようにしましょう。異物を飲み込んでしまうとウサギ消化器症候群(RGIS)の原因にもなります。

●適度な刺激を与える

運動不足と同様に、ケージの中で一日ぼーっと過ごしているうさぎは食欲が低下しがち。さらに暇だから毛づくろいばかりして、毛を飲み込む量が増えてしまいウサギ消化器症候群(RGIS)になるといったケースも。

適度な刺激は食欲増進につながります。飼い主さんが声をかけたり、一緒に遊ぶのも刺激になりますし、一度に一日分の牧草をあげるのではなくこまめに与えるといったことも効果的です。

刺激がないことはうさぎにとって良いようにも思えますが、普段からある程度の刺激がないと、些細なことで大きなストレスを感じ体調を崩すことになりかねません。

例えばうさぎにとってストレスになるような抱っこなども普段から行うことで刺激にもなりますし、健康チェックにも役立ち、ストレス耐性がついてウサギ消化器症候群(RGIS)の予防につながるともいえます。

もちろん必要以上にする必要はありませんが、うさぎにとって適度な刺激を与えることを意識してみましょう。

●お腹の状態をチェックする

普段からうさぎのお腹をさわって正常な状態を知っておくことで、「鬱滞(うっ滞)になりかけている」のがわかるようになります。できれば毎日さわってチェックしましょう。

初期(少しいつもよりお腹が固いくらい)であれば、お腹をマッサージすることで蠕動が促進されることがあります。

マッサージを行う際はうさぎを抱えて固定し、下から手を入れてお腹全体をもみほぐします。最初は獣医師にやり方を指導してもらいましょう。

ただしお腹が膨らませた風船のようにパンパンに張っているようなときや、異物で硬くなっているとき、ゴツゴツした感触のときはマッサージは厳禁です。すぐに動物病院を受診してください。

(マッサージの様子。 撮影協力:斉藤動物病院)

治療・看護

症状によって治療法は異なりますが、詰まっているものを流すため、水分補給を行い、消化器の動きを促す薬や鎮痛剤を投与します。場合によっては全身麻酔で切開手術を行い、内容物を取り除きます。

自力で食べられない場合、強制給餌が必要になることも。シリンジを口の脇から差し込み、流動食を流し込みます。獣医師の指導を受けてから行いましょう。

体温が下がっていたら、ペットヒーターなどを使い保温を。

季節の変わり目などに必ずウサギ消化器症候群(RGIS)になる子などもいます。うさぎは病気になっても症状を隠す動物なので発見は困難ですが、「うちの子はどんなときに鬱滞(うっ滞)になるのか?」というパターンを把握し、初期症状を見逃さないようにしましょう。

また、高齢になると食事量も減り免疫力が低下してくることからウサギ消化器症候群(RGIS)になりやすくなります。

硬いものよりやわらかいものを好むなど牧草の好みも若いころとは変わってくることがありますし、首を上げづらくなって高い位置の牧草入れなどは使いづらくなり床置きの方が食が進むことも。

好みの牧草を見つけ、牧草を食べやすい環境を整えるなどの工夫で、長生きうさぎを目指しましょう。

牧草を食べているうさぎ

鬱滞(うっ滞)の予防から症状に合わせて、サプリメントを効果的に使ってみましょう。

お腹の中に毛が溜まっているとき、うんちが毛で繋がっているとき ⇒ ロディケアヘアボール

フードや牧草をほとんど食べないとき ⇒ ロディケアアペティート

食欲がなく、お腹が張っているとき ⇒ ロディケアアクート

強制給餌のとき ⇒ ロディケアインスタント

 

 

 

 

 

 

 

 


The following two tabs change content below.

齊藤万里子

うさぎの専門雑誌『うさぎと暮らす』元編集長。 『うちのうさぎのキモチがわかる本』元編集部員。 現在はフリーでペット関連書籍・雑誌の執筆・編集を行う。