斜頸とは

首をかしげているように頭が斜めに傾いている状態を斜頸と言います。斜頸自体が病名ではなく、原因はさまざまです。

首が左右どちらかに傾いていてまっすぐに戻らない、眼振(眼球が揺れ動く)、まっすぐ歩くことができず同じ方向にグルグルと歩き続ける、立てなくなり横に倒れてグルグル回り続ける(ローリング)などの症状が出ます。

斜頸のうさぎ

原因

  • 細菌性中耳炎・内耳炎
    パスツレラ菌などの細菌感染により、耳の奥にある平衡感覚をつかさどる器官(前庭)に異常が起こり発症します。
  • エンセファリトゾーン症(微胞子虫症)

エンセファリトゾーンという寄生虫により、中枢神経系に異常が起こり発症します。

  • 外傷

頭部や首の骨や筋肉にダメージを受けたことが原因で発症することもあります。

斜頸の後遺症

検査・治療

耳鏡やCT検査で耳内の状態を診たり、血液検査でエンセファリトゾーンの抗体を調べるなどします。

抗生物質やステロイド、駆虫薬などの投与をして治療します。

しかし斜頸は再発も多く、終生治療が必要になることもあります。症状が軽くなっても首は傾いたままの状態で固定されたり、後遺症が残るケースも多くあります。

耳鏡を使った検査の様子(撮影協力:斉藤動物病院)

予防方法

斜頸の原因となるパスツレラ菌は、飛沫(くしゃみなど)による感染、接触感染(保菌しているうさぎにかまれる、交尾など)が知られています。

エンセファリトゾーンは経口感染(多くは尿から)、胎盤からの親子感染があります。

予防方法としては、感染を防ぐためほかのうさぎとの不要の接触はしないようにすること。

また、パスツレラやエンセファリトゾーンに感染していることがわかったら、複数飼いをしている場合ほかのうさぎへの感染を防ぐため生活空間を分けるなどの対策が必要です。

ただ、パスツレラはほとんどのうさぎが常在菌として体に持っています。健康なときは無症状ですが、ストレスや加齢などにより免疫力が低下すると発症し、斜頸などの症状を引き起こします。

エンセファリトゾーンも、感染していても無症状のキャリアも多いと言われており、パスツレラと同様に免疫力の低下で発症します。

そのため食事をしっかりと食べて免疫力を高め、ストレスのない生活を維持することがいちばんの予防といえます。

斜頸の後遺症

 

看護と生活の工夫

発症直後はうさぎもパニックになることがあるので、ぶつかってケガをしたりしないよう気をつけてあげましょう。

ケージ内はフラットにして、タオルなどで壁をガードし体の支えになるタオルを丸めたものなどを用意してあげるのがおすすめです。

ローリングがひどい場合は体の動きを制限したほうが安定するので、キャリーで生活させるのも一案。病院に連れて行くときも小さめのキャリーにタオルなどを敷きつめて運ぶようにしましょう。

食欲が落ち、水を飲んだりすることも難しくなります。食欲を刺激するためラビットフードをふやかした流動食などあげたり、スポイトで水を飲ませるなどの介助を。自力で食べられない場合は、強制給餌が必要になります。

ある程度回復してくると、首の傾きが残ってもその状態にうさぎが慣れ、バランスをとってうまく生活できるようになります。症状の強さやそのときの状態に合わせて、うさぎが過ごしやすい環境を整えてあげましょう。


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齊藤万里子

うさぎの専門雑誌『うさぎと暮らす』元編集長。 『うちのうさぎのキモチがわかる本』元編集部員。 現在はフリーでペット関連書籍・雑誌の執筆・編集を行う。