今回はペットフードに関する法律やウサギの栄養に関する研究をリードする研究機関、学会について解説します。

ペットフードに関する法律や団体

アメリカの場合
アメリカの動物用飼料を管理する団体「全米飼料検査官協会 (AAFCO)」はガイドラインの中に、ウサギの項目を設け、栄養基準を定めています[1]。この他、AAFCOはペットフードの適切なラベリング(名前の付け方や栄養素の表示の仕方)の基準を示しています。
また、食品医薬品局(FDA)はアメリカの法律に基づきペットフードの検査を行い、製造者に対する指導を行います。

EU(欧州連合)の場合
欧州ではペットフードのガイドラインを発行している団体として「欧州ペットフード工業会連合(FEDIAF)」がありますが、AAFCOと同様にウサギ独自の栄養基準を定めています[2]。
EUは複数の国で構成されていますが、各国の法律以外にEU法があり、EU法の規則が加盟国に共通して適用されます。規則の他に指令というものもあり、指令は加盟国が各国の法律に反映するものとなっています。EU法にはペットフードに関する規則が3つ、指令が1つあります。規則ではペットフードの安全性と製造・管理に関することが定められており、指令ではペットフードのラベリングに関することが定められています。

日本の場合
日本には、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)がありますが、対象動物は犬猫のみとなっており、ウサギは対象外となっています[3]。また、法律上アメリカやEUでは食品として、人の「食べ物」と動物の「飼料」が同等に扱われていますが、日本の場合はヒトと動物の間に差が生じているのが現状です。少し話がずれますが、日本ではペットなどの愛がん動物は器物=「もの」という扱いです。しかも日本ではペットとして飼育されていても、法律上カエルなどの両生類は愛がん動物でさえないような状態です。

ウサギの栄養研究の現状

動物の栄養に関する研究は畜産動物を対象として昔から行われてきました。その後、愛がん動物である犬猫の栄養についても研究されるようになりました。残念ながら日本の場合、海外のようにウサギの栄養研究に携わる研究者は多くなく、日本語で読める書籍もほとんどありません。一方、欧州諸国ではウサギは畜産動物に分類されるため、ウサギの栄養に関する研究は他国に比べると盛んにおこなわれてきました。牛豚鶏に比べるとウサギの研究者自体が少なく、未解明なところもたくさんありますが、これまでの研究成果がAAFCOやFEDIAFのラビットフードの栄養基準のガイドラインを作るうえで参考とされており、特に、この後述べる研究機関や学会が大きく貢献しています。

フランス国立農業・食品・環境研究所(INRAE)
フランスにある世界有数の研究機関であり、農業・食品・環境分野の研究が行われています。動物に関する研究も行われており、INRAEでは複数の研究者がウサギについて研究しています。INRAEのウサギ研究者の中でもThierry Gidenne氏は世界的にも有名で、ウサギの栄養学者で彼のことを知らない人はいないと言っていいでしょう。ウサギの研究でノーベル賞をもらえることはないと思いますが、Gidenne氏の論文の引用数(どの程度、他の研究の参考にされたか)はノーベル賞を受賞されている方々と同じレベルとなっています。

バレンシア工科大学(UPV)
スペインのバレンシア州にある工科大学です。ここにはウサギに関する研究者が10名以上集まっており、ウサギの研究者が海外からたくさん学びに来ています。あとで述べる学会事務局もUPVにあり、学会が発行する雑誌もUPVのサイトから無料でアクセス可能となっています。

World Rabbit Science Association
世界中のウサギ研究者が所属する国際学術団体です。前述のバレンシア工科大学に事務局があり、学術雑誌「World Rabbit Science」を発行しています。この他、4年に1度6月~7月頃に国際学会を開催しており、2016年は中国の青島で開催されました。筆者も日本からただ一人参加いたしました。本来であれば今年(2020年)は7月にフランスで開催される予定だったのですが、今般の新型コロナウイルス感染拡大の影響で2021年7月に延期されることになりました。
また、World Rabbit Science Associationのホームページには、ウサギに関する情報(畜産色が強い)が無料で公開されています。前述のGidenne氏がウサギの飼料設計ソフト(エクセル版)を作成されており、だれでも見ることができます。ラビットフードを作成する上で、食餌中の栄養素がどのくらい利用されるかを調べることが重要であることをウサギの栄養学5で解説しましたが、今後は、各栄養素がウサギにどのように利用されるのかを解説していきたいと思います。

参考文献
1 Association of American Feed Control Officials (AAFCO). https://www.aafco.org/
2 The European Pet Food Industry: NUTRITIONAL GUIDELINES FOR PET RABBITS. http://www.fediaf.org/self-regulation/nutrition.html
3 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号). https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=420AC0000000083


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川﨑浄教
一般社団法人うさぎの環境エンリッチメント協会 理事 香川大学 農学部助教 農学博士 現役の研究者としては、日本唯一のウサギ栄養学の研究者