今回はデンプンがウサギの消化管でどのように消化されるか(分解され取り込まれていくか)を解説します。

デンプンとは

デンプンは、植物の種子や根、塊茎などに存在している多糖類で、草食性のウサギにとって重要な栄養源のひとつです。デンプンは自然界では、セルロースに次いで2番目に豊富な炭水化物といわれています[1]。

デンプンはブドウ糖が鎖状につながった状態で存在しています。正確にはデンプンはブドウ糖がまっすぐ繋がった①アミロースとブドウ糖が分岐して繋がった②アミロペクチンの集合体です。

植物が栄養源としてブドウ糖をデンプンとして蓄えるように、動物はブドウ糖をグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えています。デンプンとグリコーゲンは鎖のつながり方が違うだけでブドウ糖が繋がって出来ています。

表1はラットのデータではありますが、植物の種類に応じて、デンプンの消化は影響を受ける可能性があります。

表1.餌料原料中のデンプン濃度およびラットのデンプン消化率

原料名 デンプン(乾物中%) デンプンの消化率
小麦 65~70 98~100
トウモロコシ 65~80 98~100
アミロースを多く含むトウモロコシ 50~65 66~77
エンドウマメ 43~48 99
ソラマメ 30~43 99
バナナ 15~25 49
キャッサバの根 80~85 95~97
ジャガイモ(生) 60~65 27~28
[2]より作成

例えば、アミロースを多く含むトウモロコシは、標準的なトウモロコシよりも消化率が低いです(表1)。さらに、デンプンの粒子サイズが原料で異なっています。バナナや生のジャガイモは他に比べ大きいため、消化酵素が届かない部分が出てきてしまい消化率が低くなると考えられています。

消化管のさまざまな部分でのデンプンの消化

デンプンはウサギの消化管でほぼ完全に消化されます。このため、デンプンの糞便排泄は一般的に最小限(摂取量の2%未満)ですが、ウサギの年齢やデンプンの供給源にもよりますが、場合によっては摂取量の10%に達することもあります(詳しくは次回に解説します)。

デンプンの消化は主に小腸で行われることが知られていますが、デンプンは胃や大腸などの消化管でもある程度分解されることが報告されています。

胃での消化

デンプンを分解する酵素であるアミラーゼは唾液中に分泌されています。ウサギが食べた餌料中のデンプンは唾液中のアミラーゼによる分解を受けながら、胃の中へ移動し、胃液による酸性の環境でアミラーゼは働かなくなります。つまり、胃の中ではデンプンの分解は一旦ストップすると考えられていました。

ところが、ウサギの胃の中ではデンプンの分解が進んでいることが報告されています。この理由として、ウサギが食べる軟糞中にはアミラーゼを分泌する微生物がいるのではないかと考えられています。この他、軟糞が胃内に加わることで酸性環境が弱まることで唾液中のアミラーゼが働いているのではないかとも考えられています。

小腸での消化

上述のように、デンプンの消化は主に小腸で行われることが知られています。

小腸には膵臓から分泌される膵アミラーゼが流入し、デンプンを分解します。デンプンは分解されると最終的にはマルトースになり、小腸にある絨毛内の消化酵素(マルターゼ)でさらにグルコースとなり体内に吸収されます。つまり、デンプンを消化吸収するためには小腸の絨毛が大きく関与していると言えます。

小腸の絨毛は消化管の内腔に向かって棒状に伸びていますが、早期離乳により絨毛高が減少することが報告されています。早期離乳してしまうと栄養を消化吸収する場所である絨毛が減少してしまうため、子ウサギの離乳は35日付近が良いと考えられています。

盲腸での発酵

小腸で未消化のデンプンは、盲腸内の微生物により乳酸と揮発性脂肪酸(VFAs)に換えられ、血中に吸収されると言われています。また、過去の研究により、盲腸内でアミラーゼが働いていることが報告されています[3-5]。

盲腸内で見つかったアミラーゼは小腸から流入した可能性や盲腸内の微生物が分泌している可能性が指摘されています。実際にアミラーゼを産生する菌として、Actinomyces israeliiDichelobacter nodosusMitsuokella multiacidusBacteroides spp.、Eubacterium spp.、Clostridium spp.などが報告されており、ウサギの盲腸内にも似た菌がいることがわかっています[6]。

まとめ

ウサギの消化管内でのデンプン消化吸収過程をまとめると図1のようになります。

吸収されたグルコースや脂肪酸などは肝臓に送られ、エネルギー生産に利用されたり、貯蔵されたりします。

次回はデンプンの消化吸収に影響を及ぼす様々な要因について解説したいと思います。

図1.ウサギの消化管内でのデンプン消化吸収過程

参考文献

  1. Blas, E., Gidenne, T. 2010. Digestion of sugar and starch. In: Nutrition of the Rabbit, 2nd Edition. CAB International, pp 19-38.
  2. Champ, M. and Colonna, P. 1993. Importance de l’endommagement de l’amidon dans les aliments pour animaux. INRA Production Animale 6, 185–198.
  3. Yoshida, T., Pleasants, J.R., Reddy, B.S. and Wostmann, B.S. 1968. Efficiency of digestion in germ-free and conventional rabbits. British Journal of Nutrition 22, 723–737.
  4. Makkar, H.P.S. and Singh, B. 1987. Comparative enzymatic profiles or rabbit caecum and bovine rumen contents. Journal of Applied Rabbit Research 10, 172–174.
  5. Marounek, M., Vook, S.J. and Skrivanová, V. 1995. Distribution of activity of hydrolytic enzymes in the digestive tract of rabbits. British Journal of Nutrition 73, 463–469.
  6. Sirotek, K., Marounek, M. and Suchorská, O. 2006. Activity and cellular location of amylases of rabbit caecal bacteria. Folia Microbiologica 51, 309–312.

The following two tabs change content below.
川﨑浄教
一般社団法人うさぎの環境エンリッチメント協会 理事 香川大学 農学部助教 農学博士 現役の研究者としては、日本唯一のウサギ栄養学の研究者