はじめに -糖類とは-

牧草や穀類といった植物に含まれる炭水化物は2つのグループに分類することができます。具体的には、(A)ウサギの消化管に分泌される酵素によって分解可能なもの(易消化性)と(B)腸内細菌によって生成される酵素によってのみ分解可能なもの(難消化性)に分類できます。(A)は主に植物細胞内に存在し、単糖類や二糖類といった消化しやすい単純な糖(ここでは単純糖という名称で扱います)やデンプンが含まれます。(B)は主に植物細胞壁を構成する多糖類(セルロースやヘミセルロースなど)が含まれますが、微生物のみが分解できるオリゴ糖も含まれます。今回は、(A)易消化性の中の単糖類や小糖類からなる単純糖について解説します。

図1 糖の分類

 

単純糖とオリゴ糖

単純糖やオリゴ糖は「糖類」という一般的な用語で単純にまとめて扱われることが多いですが単純糖とオリゴ糖は先に述べたように同じプロセスで消化されません。単純糖はウサギが分泌する消化酵素によって非常に迅速に分解され、小腸から吸収されます。しかし、オリゴ糖は細菌の酵素によって分解される難消化性の糖が含まれます。

本来、糖の分類では単純糖という名称は使わないのかもしれません。なぜなら、二糖類や三糖類も正確にはオリゴ糖(小糖類)に含まれるからです(図1)。ここでいう単純糖は易消化性の単糖類と少糖類のみをいうこととします。

 

単純糖を含む餌料原料

糖類は一般的に餌料中に低濃度で存在しますが、糖蜜などの原料では単純糖含有率が約50%に達するものもあります(表1)。

表1 ペレットフードに用いられる原料の糖aの含有率

原料名 風乾物中糖含有率(%)
糖蜜 46.6
柑橘類の皮 20.0
リンゴ絞り粕 14.0
大豆粕 8.30
小麦フスマ 6.70
ビートパルプ 6.60
ヒマワリ粕 5.70
大麦 2.10

a 80%エタノールに可能な糖の量を分析したもの。

[1]より作成

一般的な原材料に含まれる単純糖は、グルコースとフルクトースが主で、単糖またはショ糖(グルコース+フルクトース)として存在しています。他の二糖類も飼料中に含まれることがあります。例えば、主にデンプン分解物に由来するマルトース(グルコース+グルコース)や、大豆やビートに含まれるメリビオース(ガラクトース+グルコース)などがあります。ちなみに、ウサギは他の哺乳類と比較して、乳中の乳糖(ラクトース:グルコース+ガラクトース)含有量は非常に低いレベル(母乳乾物中に5%含有)であるため[2]、幼齢ウサギのペレット飼料に乳糖を添加するのは一般的ではありません。

 

単純糖の消化

グルコースとフルクトースはデンプンに比べて小腸で吸収されやすいです。ウサギに消化吸収された糖質のうちエネルギー源に使われなかったものはグリコーゲンという鎖状の物質にして筋肉や肝臓中に蓄えられます。しかし、そのグリコーゲンの貯蔵可能量以上に糖質を摂取してしまうと余った糖質は脂肪として蓄積されてしまい、ウサギの肥満につながります。糖質を多く含むものはウサギにとっても美味しいものですので与えすぎには注意が必要です。

また、小腸のうち大腸と接する部分である回腸の内容物中の糖類(80%エタノールに可溶)のレベルは、標準的な市販飼料を与えた成熟ウサギの場合、2.5%(乾物中)に達することがあり[3]、盲腸に入る糖類の流れも無視できないでしょう。オリゴ糖とは異なり単純糖が盲腸内に流入した場合に腸内細菌にどのような影響を及ぼすのかについては未解明ですが、単純糖を利用していくつかの微生物が増殖した場合は腸内細菌叢の多様性が崩れ、下痢を発症するといったウサギの健康に悪影響が及ぶと考えられます。餌料の摂食量の管理が必要といわれる理由として、上記のようなことが懸念されることが挙げられます。実際に、腹8分目(実際の研究では65%ですが)の方がウサギの生存率が高いことも報告されています[4]。

次回は糖類に引き続き、デンプンの消化について解説します。

 

参考文献

  1. Blas, E., Gidenne, T. 2010. Digestion of sugar and starch. In: Nutrition of the Rabbit, 2nd Edition. CAB International, pp 19-38.
  2. Maertens, L., Lebas, F. and Szendrö, Z. 2006. Rabbit milk: a review of quantity, quality and non-dietary affecting factors. World Rabbit Science 14, 205–230.
  3. Gidenne, T. and Ruckebusch, Y. 1989. Flow and rate of passage studies at the ileal level in the rabbit. Reproduction Nutrition Development 29, 403–412.
  4. Gidenne T, Combes S, Fortun-Lamothe L. 2012. Feed intake limitation strategies for the growing rabbit: effect on feeding behaviour, welfare, performance, digestive physiology and health: a review. Animal 6(9), 1407-1419. doi:10.1017/S1751731112000389

The following two tabs change content below.
川﨑浄教
一般社団法人うさぎの環境エンリッチメント協会 理事 香川大学 農学部助教 農学博士 現役の研究者としては、日本唯一のウサギ栄養学の研究者