アメリカでの兎ウィルス性出血病タイプ2( RHDV2)の感染拡大が報告され、国内のうさぎオーナー様から心配する声が届いております。
現在、兎ウィルス性出血病の治療法はなく、欧州ではワクチンが承認されていますが、アメリカをはじめ日本でもワクチンは承認されていない状況です。
現在のところ国内で発症の報告はなく、それほどご心配いただく状況ではありませんが、他の感染症を含めて感染予防を徹底することは、うさぎさんの健康を守る上で大切になりますので、今回感染予防の方法お伝えしたいと思います。
また、タイプ1については1994年に初めて感染報告があり、昨年度は国内で12例報告されています。
目次
予防方法
- ウサギと触れ合う前後に、石鹸と水で手洗いをしてください。
- 知らない人や信頼できない人のウサギと接触させないようにしてください。
- 飼育環境を衛生的に管理するようにしてください。
- 他の飼い主さんと玩具や飼育用品などを共有しないようにしてくださ。
- 器具やおもちゃ、材料などを他の飼い主さんと共有しないようにしましょう。
- ウサギを外出させる場合は、他の動物、人との接触は避けるようにしてください。
- 他のウサギや動物と接触するような社交的な集まりは避けてください。
- うさぎの様子に細心の注意を払い、何か症状の可能性がある場合はすぐに獣医師に連絡してください。
- 屋外で亡くなっているウサギの死骸には直接触らないでください。
※兎ウィルス性出血病のウィルスであるウサギカリシウイルスは、アルコール消毒が効きにくいため、塩素系で消毒するのが最も効果的だと思われます。塩素系消毒液はウサギにとって刺激臭である上、きれいに洗い流す必要があります。このため次亜塩素酸水などが使うことが良いと思われます。
感染症状
感染した成兎は元気消失、食欲廃絶、発熱、ときに神経症状、鼻出血などの臨床症状を呈し、数日の経過で死亡します。何ら症状を示さず突然死することも報告されています。
致死率はタイプ1で40~100%、タイプ2で5~70%以上となっています。
ウィルスについて
ウサギカリシウイルスは、コロナウイルスのようなエンベロープタイプ(脂質の膜で保護されている)ではなく、ノンエンベロープタイプのウィルスになります。ノンエンベロープタイプのウィルスはとても強く、布地では20℃で105日間、3.8℃では225日間生存します。凍結では死滅しません。
タイプ1の潜伏期間は2~10日、タイプ2の潜伏期間は3~9日です。
ウサギによっては無症状の子もおりますが、感染するとキャリアであり、少なくとも42日間、おそらくそれ以上の期間ウイルスを排出すると言われています。
ウィルスの地理的分布
タイプ1は、1984年に中国で最初に発見され、以来、ヨーロッパ、地中海、アフリカ、アジア、イスラエル、英国、メキシコ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを含む40か国で症例が確認されています。
タイプ2は、2010年にフランスで初めて報告され、ヨーロッパの大部分だけでなく、オーストラリア、カナダ、米国にも広がっています。
感染方法
感染したウサギの排泄物や血液に直接接触することで感染します。また、ウイルスは死骸、食物、水、その他汚染されたものとの接触からも伝播します。人が衣服や靴にウイルスを付着させ、間接的にウイルスを拡散させることもあります。
牧草からの感染リスクについて
良質な牧草の大半はアメリカからの輸入に頼っております。
兎ウィルス性出血病は牧草を介して感染する可能性がありますが、そのためには牧草の中に感染した動物がいることや、ウイルスの生存をサポートする特定の環境条件が必要となります。
このため、その感染リスクは極めて低いものとなります。
参考:国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 家畜の監視伝染病
U.S. DEPARTMENT OF AGRICULTURE Rabbit Hemorrhagic Disease 2019.10
House Rabbit Society Rabbit Hemorrhagic Disease Virus (RHDV) 2020.5.17
Oxbow animal health Rabbit Hemorrhagic Disease (RHDV2) – Important Information and Frequently Asked Questions 2020.4.30
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