彼に会ったのは雨の日だった。

社会人になって１年目。

わたしは同じ職場の先輩、拓哉さんと遊園地に行く約束をしていた。

けれど当日は生憎の雨空で、わたしは初めて拓哉さんの部屋にお邪魔することになった。

彼の部屋には男の子のフェレット、ロッキーがいた。

わたしがフェレットついて知っているのは、クネクネ動いて臭いが「きつい」ということくらい。

ケージ越しに初めて会ったロッキーは、キラキラした小さな丸い目でわたしを見ると

『だれ？遊んで♪遊んで♪』と言わんばかりにケージにへばりついて全身でその存在をアピールしていた。

しかもロッキーはつやのあるきれいな毛並みで、においもほとんどなく、それまでのイメージとの違いに驚かされた。

拓哉さんにケージから出してもらうと初対面のわたしを警戒する様子もなく「クックックック」と小さな声を出しながら、わたしが振る猫じゃらしを懸命に追いかけてくる。

この「クックックック」という声は楽しい時に発する声だと拓哉さんが教えてくれた。

ロッキーは拓哉さんにとって大切でかけがえのない存在で、陽気で屈託のないロッキーと一緒に暮らすようになってから毎日が楽しいと目を輝かせて話してくれた。

フェレットと暮らすことは多くの人にとって経験のないこともかもしれない。

けれども拓哉さんとロッキーの暮らしを直に見て、フェレットとの暮らしがわたしに楽しみと幸せを与えてくれるような、そんな気がした。

フェレットとの暮らしがこれからのわたしの生活を明るく変えてくれるのかもしれない。